大阪音大突然契約終了通知問題で、多くの人に心配をおかけしております。
ここに至った私自身の話と、大阪音大にミュージックビジネス専攻がどのように誕生したか?の話を書いておこうと思います。
専攻を立ち上げた山口哲一さんのブログも合わせてお読みください。
音楽業界で働きたい!
京都府で生まれ育った関西人です。
東京一極集中の音楽業界で仕事したいと思い上京しました。情報の多さでは東京に勝てるはずがなく。東京への憧れと反抗心がありました。音楽業界は、教えてもらうのではなく見て盗め、背中を見て学べといったアナログな業界で、独立心の強い関西人の私はなんとか業界に潜り込み、仕事を覚えていきました。レコード会社でのプロモーター、無経験でのCD発売、マネジメント、年間100本以上の貧乏ライブツアー。ライブハウス/クラブでの店長、マネジメント。アーティスト事務所の設立とメジャーデビュー。全てのことが手探り、失敗ばかりして学び続けました。
担当アーティストがブレイクして得られた市民権
担当したアーティストが売れてくれたことで、音楽業界の市民権を得ました。「メンバー」として認められた、「一人前」のような認知をされたということでしょうか。なんとか一つの夢を叶えたという気がしました。しかし、この仕事は一生勉強、常に努力だと思います。プロとして認められ続けたいという想いがあります。浮き沈みの多い世界でそれをキープするのは簡単ではありません。その後もサバイバルするために学びながら働き続けています。
音楽ビジネスを教える
両親兄弟、一族皆、学者、教師ばかりの世界で育ってきました。人材育成、教育は向いているんじゃないかと思うことはいろんな現場で感じましたので、尚美ミュージックカレッジという専門学校でマネジメントを教えてほしいと言われた時は、ピンとくるものがあり、有難く引き受けました。仕事の現場で卒業生と出会うと、授業を受けていた時は理解できなかったが、現場で役に立ったと言ってもらえます。それがモチベーションになっています。
かつての自分のような、業界で働きたいがどうやっていいかわからない人に参考にしてもらいたいという想いで指導に取り組みました。やがて、誰もが音楽ビジネスを学べるようにするために「マネジメント」や「音楽ビジネス」を、定義化し、体系化するよう務めるようになりました。
山口哲ーさんとの出会いとマネジメント本の執筆
2017年に執筆、出版した『アーティストが知っておくべきマネジメントの実務』(リットーミュージック)は、音楽ビジネス現場を一通り経験した積み重ねを目の前にいない人に伝える為に書いた本です。デジタルテクノロジーによる音楽ビジネスの急速な変化があるからこそ、このようにノウハウを広める本が成立すると感じました。今でも、音楽関係者から、マネジメント本を読みました。バイブルです。と言ってもらえることもあり、本当に嬉しく思います。
この本を出すきっかけとなったのが、監修した山口哲一さんとの出会いです。今の私の仕事に繋がる重要な出来事です。2009年頃、音制連(音楽事務所の団体)が音楽ビジネスのデジタル化についてのセミナーを開催すると知り、張り切って当時の部下たちを引き連れて参加しました。ネットを使ったプロモーションで大きな成果を挙げていましたし、デジタル化こそが音楽ビジネスの未来だと確信していました。そこで初めてお会いしたのです。その後、山口さんがニューミドルマン養成講座を立ち上げた時に、運営、制作として参加し、今に至る、長い、デジタル時代を切り開く音楽ビジネス人材の育成活動が始まったのです。
マネジメント本企画は、このニューミドルマン養成講座の書籍化プロジェクトの中で実現したのです。
大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻プロジェクト
2018年頃、山口さんに大阪音楽大学から、新学科を作るプロジェクトの依頼があったと聞き、大変嬉しく思いました。山口さんと一緒に取り組んできた先進的な取り組みが評価されたとの思いもあります。また、私の地元関西で、音楽を専門とする学校に進学した学生たちを指導できるというのは私の素養や性質を活かせる仕事だと期待しました。
私自身が、音楽ビジネスの一員として直接指導すると共に、さらに多くの一線で活動するプロフェッショナル人材をキュレーションし、学生にそのスキルや思想、魂に触れてもらう機会を与えたいと考えました。演奏系や研究系の専攻と同じく、音楽という素晴らしい文化を担う人材を育成したいという志で活動し、その結果生まれた「専攻」なのです。私たちにとっては。
現在進行形の音楽シーンを感じながら学ぶ
常に若者が主導するトレンドが変化し続ける音楽ビジネスを教えることは非常に難しいです。評価が定まったトレンドはすでに古いものであるからです。なので、私は教員として指導しながらも現役の音楽ビジネスマンであり続けたいと考えています。
特に、ネットテクノロジーの普及による趣味趣向の多様化、市場のグローバル化も進行し、既存の音楽ビジネスのあり方は大きく変化し続けています。どれだけ、現場の空気を感じ、手足と頭を動かし、汗を流しているか重要です。長年の経験や、慣習に縛られず、学び、実践することで音楽ビジネスの考え方をアップデートし続けないといけません。
~誰でも音楽ビジネス出来る時代~Anyone can do music business!
業界は秘密が多く、閉じた村社会ですが、デジタルテクノロジーの進化と普及により、時代が変わり、風通しが良くなり透明化が進んでいます。様々なプラットフォームを活用すれば、レコ―ド会社や事務所の力無しでは出来なかった仕事も、誰もが行うチャンスが与えられました。
昔は、アーティストを目指す若者は、「〇歳までに事務所やレコード会社からデビューできなければ、音楽の道は諦める」と言っていましたが、今の時代、所属できなくても全世界に曲を配信できますし動画を公開出来ます。その楽曲やパフォーマンスが拡散され人気者になった人はごまんといます。「諦める」必要が無くなりました。所属し続ける為にやりたい事を我慢する必要も減っています。選択肢が増えたのです。
今の時代は、何歳であっても楽曲とパフォーマンスを発信し、広め、その対価である報酬を受け取る手段が揃っています。あと必要なのはノウハウと行動力です。そして、何より大事な「音楽愛」「信頼」です。
音楽デジタルマーケティング会社と書籍の出版
現在、プロデュースやマネジメントといった通常の?音楽ビジネスと、指導活動を行いながら、2年前より取り組んでいる「音楽デジタルマーケティング」の会社設立と、本の執筆に取り組んでいます。SNSや動画投稿サイトを使ったデジタルマーケティングは、現在のビジネスや社会活動に不可欠な存在ですが、「音楽」という特殊なツールを扱うことは、他の業種とは違った仕組みとスキル体系が必要です。音楽は人間の「心」を動かす、つまり「感動」を扱う仕事だからです。コスメ商品や食品、雑貨は心を持たないですが、アーティストは心を持った人間です。アーティストやスタッフ関係者、リスナー。。音に触れる人たち全ての心が生み出す瞬間瞬間に変化するマジックなのです。音楽デジタルマーケティングの手法を体系化、定義づけすることで、日本の、世界の音楽ビジネスを進化させ、音楽の力で未来を少しでも明るくしたい。貢献したいと考えています。
大阪音楽大学の契約終了問題は、避けられない戦いだと思っていますが、同時に、新時代音楽ビジネス人材育成も、私が人生を賭けて取り組む仕事であり、それは、大学がどこであれ、学校だろうが現場であろうが続けていく仕事です。
決して嘘をついてはいけない、入学者を集めるための嘘の「企画」であってはならないのです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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☆脇田敬☆
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著書『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』,
経産省監修『デジタルコンテンツ白書』編集委員
ポッドキャストも始めました。
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2022年4月開講 大阪音楽大学ミュージックビジネス専攻
www.daion.ac.jp
プロデュースやマネジメントなど関わった音源のプレイリストです!