『クリード 炎の宿敵』とルドウィグ・ゴランソン(映画×音楽レビュー)

音楽ビジネスBlogも殆ど、映画趣味Blogと化してきましたが。。。

今回は1月11日公開のこの映画と、音楽を手掛ける注目の音楽家ルドウィグ・ゴランソンについて。

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ボクシング映画の金字塔、ロッキー・シリーズ最新作でありながら、黒人映画の名作『クリード チャンプを継ぐ男』の続編でもあります。



まずは、その前作がこちら↓

クリード チャンプを継ぐ男

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映画『クリード チャンプを継ぐ男』特別映像(Generations)【HD】2015年12月23日公開



あの有名なロッキーのライバルであり親友の黒人チャンピオン、アポロ・クリードに隠し子がいて、ロッキーに弟子入りするという映画。名作です。絶対見てほしい!

監督はライアン・クーグラー、この『クリード チャンプを継ぐ男』をヒットさせ、次の作品でマーベルの『ブラックパンサー』を超大ヒット、ブラックムービーとメガヒット・ブロックバスターを両立させ、興行成績歴代3位(これより上は『スターウォーズ フォースの覚醒』と『アバター』)と時代の寵児となった。

↑の動画に当時27才のクーグラーが、スタローンに、黒人を主役にしたロッキー続編の提案をしたエピソードあります。主役にクーグラーの分身であるマイケル・B・ジョーダン、そしてロッキー自らがコーチ役に。ファンタジーとリアルを絶妙にかぶせ、エモーショナルな作品になっています。

この映画、いくつか名場面があります。親父のYoutube動画をプロジェクターで映し出してシャドーボクシングするシーン。癌になったロッキーを介護しながら病院でトレーニング。ストリートバイカーのような集団と一緒に街を走るロードワーク~バイクがぐるぐる走り回る中シャドーボクシングをしてロッキーを励ますシーン。などなど。。



 

 

ブラックパンサー

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主要キャスト全て黒人、監督も黒人という画期的なヒーローSF映画ブラックパンサー』。この映画の監督であるライアン・クーグラー、そして、強敵キルモンガー役として存在感を発揮したマイケル・B・ジョーダンが、今回紹介する『クリード』の主役アドニスクリードを演じている。

 
ブラックパンサー』は、ケンドリック・ラマーのプロデュースにより、現在のヒップホップやR&B中心のメインストリームアーティストが集結したソングアルバムも発表され、大ヒットを記録している。

 この『ブラックパンサー』、テクノロジー描写による近未来とアフリカの民族的な伝統をミックスさせ、アフリカ系美男美女俳優がズラリ登場して、見た事のない世界観を生み出しています。オスカーにもノミネートされるのではという噂で、時代を象徴する作品であり、新しい映像体験を生んだ作品としてチェックしておきたいところです。そして、音楽がその世界観に大きく貢献したとして、高い評価を得るでしょう。


つまり『クリード』とは、名高いロッキーシリーズの進化形であり、現代アメリカカルチャーの潮流の中心にある映画やヒップホップなどブラック・カルチャーでもあるという、2大潮流が合流するという状況から生まれたエンタメ作品が『クリード 炎の宿敵』なのだ。



さて、ここからは音楽の話。。これらの作品を音楽面で支えているのが、この人

クーグラー、チャイルディッシュ・ガンビーノの音楽を手掛けるスウェーデン作曲家ルドウィグ・ゴランソン

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前作『クリード チャンプを継ぐ男』と『ブラックパンサー』を紹介したのは、理由がある。このブログ記事において、中心となる音楽家、ルドヴィグ・ゴランソンは、クーグラーやジョーダンとチームを組んで、この『クリード 炎の宿敵』でも音楽で作品を盛り上げている。
彼は、南カリフォルニア大学でクーグラーと出会い、『フルートベール駅にて』『クリード チャンプを継ぐ男』『ブラックパンサー』というクーグラー3作で音楽を手掛けた。
特に、『ブラックパンサー』での、アフリカ音楽を取り入れたスコアは、アフリカの架空の国、実は世界最先端のテクノロジーを持つという、ワガンダの世界観を音楽で実現した。クーグラー、ジョーダンと共に成功の階段を登った音楽家だ。

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そして、ゴランソンを語るのに欠かせないのが、チャイルディッシュ・ガンビーノ(ドナルド・グローヴァー)だ。
2018年、アメリカの人種問題や貧困、暴力など社会問題を描き「This is America」(これがアメリカ)ろ歌い、衝撃を与えた曲とビデオ。


Childish Gambino - This Is America (Official Music Video)


俳優、脚本家、コメディアンであるドナルド・グローヴァーの音楽活動の際のプロジェクト名が「チャイルディッシュ・ガンビーノ」だ。
2016年に発表された『Awaken, My Love!』が大ヒットを記録。最優秀トラディショナルR&B賞を受賞した「Redbone」はじめ、5部門にノミネートされ、トップアーティストの地位を確立した。日本でもCMに使われたりと耳にした人は多いだろう。
ルドヴィグ・ゴランソンは、このガンビーノの最初のミックス・テープ2010年発表の『Culdsec』から、プロデューサー、共作者として、音楽的な中心を担っている。

 


open.spotify.com

ファンカデリックなど70年代のブラックパワー音楽の影響を受けたトラックを基調としたチャイルディッシュ・ガンビーノの音楽的パートナーと言える。

 

「This is America」で、アメリカで最も注目されるアーティストの一人となったチャイディッシュ・ガンビーノ、そしてアメリカで最も注目された映画『ブラックパンサー』、この2つの分野のブラック・カルチャーにおいて音楽を担ったのが、ルドヴィグ・ゴランソンなのだ。


 

クリード 炎の宿敵』


映画『クリード 炎の宿敵』本予告【HD】2019年1月11日(金)公開

 


映画『クリード 炎の宿敵』特別映像【誰が為に戦う編】2019年1月11日(金)公開


前作『クリード チャンプを継ぐ男』で、一度終わったロッキーシリーズの代替わりを果し、さらに『ブラックパンサー』の空前のヒットで、アメリカでは大ヒット間違いなしの上でのスタート。シリーズ最高のスタートを記録しているそうだ。
ちなみに、監督はクーグラーではなく、スティーブン・ケイプル・Jrという新鋭。今回製作に名を連ねるクーグラーの推薦。プロフェッショナルなスタッフ陣のもと、クオリティには全く問題ない。ブラックシネマ色は少し薄れたかもしれないので、クーグラー作品から期待する人はご注意。ライアン・クーグラーが前作でロッキーの魂を現代にリニューアルした型をしっかりエンタメに昇華した娯楽作として、確実に興奮させられ、泣かされる映画になっている。
過去のロッキーシリーズとの違いとして大きいのはヒップホップの要素。音楽的にもカルチャー的にも。前作より薄れたとはいえ、このシリーズとラップやR&Bとの相性はとてもよい。

あと、個人的には『男はつらいよ』の寅さんと甥の満男を思い出しました。
帽子とジャケットがトレードマークのロッキー。グズグズしたアドニスの成長物語。先の読める定番の展開、ここぞという場面で登場するテーマ曲。ちょっぴり意外な展開をスパイスに、なぜか感動してしまう安心の定番作品。。

1月11日から公開なので、是非、劇場で観てください。
 

 Spotifyプレイリスト

今回も記事にちなんだプレイリストを作成しました。
クリード 炎の宿敵』と『ルドウィグ・ゴランソン』の2つです。
この記事で紹介した曲がまとまっておりますので、楽しく聴いて頂けたら嬉しく思います。
70年代ファンクベースのヒップホップ、映画のサントラ・スコア(劇伴)、EDMから、ポップロック、アフリカン・ルーツ音楽と何でも探求するゴランソン。
世界の音楽シーンでヒットを次々に生み出すスウェーデン人音楽家の最先端ですね。
この2つのプレイリストで現状の彼の仕事がある程度まとまってると思います♪

クリード 炎の宿敵』

 
『ルドウィグ・ゴランソン』