Amazon、Spotify、、全世界配信コンテンツ時代に必要なアイデンティティ
Amazon Primeで歴史ドラマ『MAGI 天正遣欧少年使節』を観た。
全10話、Amazonオリジナルドラマとして、180以上の国と地域に世界同時配信。
これは新しい!日本制作の時代劇でありながら新しい!と感じるのは、全世界の視聴者に向けて作られた作品だからだろう。
Amazon、NetFlix、Hulu、、、そして音楽ではSpotify、、
今、私たちは、全世界にコンテンツ(作品)を発信する時代を生きている。
ターゲットは国内だけではない。
ITテクノロジー革命によって大きな変換期にある世界では、エンタテインメントに新しいアイデンティティを求めている。
音楽においては、アーティストという「人」がコンテンツでもある。
表面的な流行りや聞き心地の良さを楽しみながらも、リスナーは心の奥深くで、「人」が持つ、膨大な量の情報を受け取っている。
今という時代に、私達日本という島国に生きるミュージシャン、音楽関係者が、知っておくべき情報は沢山ある。
映像作品から学ぶ点は多い。
今回は、『MAGI 天正遣欧少年使節』をはじめ、いくつかの映画、本を紹介したいと思う。
【紹介する作品】
『MAGI 天正遣欧少年使節』
『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』
『沈黙』
『君の名は』
『ブラックパンサー』
『シュメルー人類最古の文明』
『サピエンス全史 文明の構造と人間の幸福』
『火の鳥』
『ブレードランナー 2049』
『Spaceman』デヴィッド・ボウイ(Space X、Falcon Heavy Test Flight)
スポンサー企業なし。忖度なし。
Amazonと世界の視聴者が喜ぶかどうか。
資本とターゲットが変わると、作り方もこれだけ変わる!
なので日本の歴史ものでありながら、今の時代に世界の視聴者が興味関心を持つ要素が満載。
いわゆる時代劇や歴史ものは、電波は政府の認可制で、スポンサーである国内企業のイメージ、そしてターゲットはお茶の間視聴者。日本という枠の中での万人受けになってしまうのは必然。
あと、海外映画祭でウケるものが作られるのは、溝口、黒澤といった巨匠が切り開いた歴史ゆえの伝統だろう。
この『MAGI 天正遣欧少年使節』は、
・有名なサムライ登場(信長、秀吉、明智、、)
というお馴染みのモチーフは登場するものの、
・キリスト教の教え、イエスの唱える「愛」とは?何か?それは、日本人の信じる神や仏と何が違うのか?
というテーマを軸に、
・人種差別、奴隷制、性、身分制
・ルネサンス~宗教革命~イエズス会によるカトリック布教~戦国時代
・キリスト教と茶道の接点(自分と向き合う)
さらに、自分の信念を貫いて生きるとはどういうことか?
という普遍的な、青春の悩みもテーマとなっている。
どれも、いままでの日本の歴史ものであまり扱われなかったテーマだ。
世界中の人が興味を持つ、同時代テーマが盛り込まれ、若い役者たちが演じる青春ストーリーでもあるこのドラマ。日本に関心がある人なら必ず楽しめるような共感ポイントが用意され、物語に入っていきやすい。
音楽を大友良英(『あまちゃん』『いだてん』等で広く知られる、元はフリージャズ・シーン出身の音楽家)が手掛け、16世紀の西洋と東洋の交差を音楽で表現している。
広い音楽背景を持つこの人だからこそ出来た音楽だと思う。こちらも要チェックだ。
Netflixオリジナル番組『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』
東洋的な伝統と西洋との出会いについては、Netflixオリジナル番組として2019年1月より全世界配信され話題となっている、片付けコンサルタントの近藤まりえ(KonMari)の番組 『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』にも見られる。
2010年に発売された『人生がときめく片づけの魔法』は、日本で100万部を超すベストセラー。世界中で発売され、累計1000万部以上売れているという。
なぜ、Netflixが番組化?という疑問も、この数字の裏付けで納得がいく。
KonMariの米国移住は、2014年。2015年には『TIME』誌の「最も影響力のある100人」artist部門に選出されている。2019年の大ブレイクは、10年がかりだと言える。
「片付け」をメソッド化し、日本でのヒットをステップに、世界進出を果たした興味深い事例だ。「ZEN(禅)」や「Jyujutu(柔術)」「KARATE(空手)」のように世界に広がるメソッドとなるか?
『MAGI』より後の時代、戦国期のキリシタン弾圧をテーマにした世界的に知られる遠藤周作の小説を原作を映画化した『沈黙』。
監督は数々の名作を持つ巨匠マーティン・スコセッシ。
ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』やローリング・ストーンズの『シャイン・ア・ライト』などロック・ドキュメンタリーの名作でも知られるスコセッシが日本びいきでキリスト教をテーマにすることは偶然ではない。
信念を貫いて生きる事とは何かを考える時に、「日本」というテーマに意味を感じるのだろう。劇中、キリスト教棄教を迫る代官が「ちょっとした形だけでいいから、転べ(信念を捨てろ)」という場面は、とても日本的だ。
拷問に次ぐ、拷問、、目をそむけたくなる場面の連続は、嫌でも人間の本質に向き合わさせられる。個人的には、「3大いじめられ映画」(観ている間いじめられている気分になる映画)、あとの2つは『ダークナイト』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』、、
日本映画史上最大級の大ヒット・アニメ『君の名は』
ご存知大ヒットアニメ作品。日本での歴代興行収入ランキングで『千と千尋の神隠し』、『タイタニック』、『アナと雪の女王』に次ぐ第4位(日本映画では第2位)。世界での日本映画の歴代1位(2位は『千と千尋の神隠し』。
日本のアニメ作品は、海外で受け入れられるブランドがあり、制作段階でも国内、海外両方を意識していると思う。
SF的なスペクタクル、若い男女のラブストーリーというエンタメ要素をしっかり押さえた上で、日本の古神道の要素がしっかり重要なファクターとなっている。主人公二人がメトロポリタン都市TOKYOと田舎で入れ替わり、スマホを使ってやり取りする等、東洋の神秘と西洋文明、都市と山村という対比が「日本」をキーワードとした関心を引くだろう。
西洋文明とアフリカ伝統をSF化した画期的な作品『ブラックパンサー』
日本は題材になっていないが、こちらも伝統と未来におてのアイデンティティが重要なテーマとなった作品。
『アヴェンジャーズ』シリーズの一作であり、マーヴェルにアカデミー賞(衣装、美術、音楽)3部門をもたらした。ヒーローSFでありながら、アフリカの架空の途上国ワカンダが実は世界最先端のテクノロジー国という設定、監督、主要キャストが全て黒人(の美男美女)という、王道ヒーローでありながら、斬新さ。
この観た事がない世界観を作り上げるのに、音楽も重要な役割を果たしている。
ルドウィグ・ゴランソンが手掛けた、アフリカ伝統音楽と劇伴、エレクトロニックをミックした劇中音楽はアカデミー、グラミー両賞を受賞、ケンドリック・ラマーが手掛けたラップ曲も映像表現としっかりリンクしている。
驚きの実話 『殿、利息でござる!』
こちらは海外を意識した作品ではないが、日本人アイデンティティを考える上で重要な作品。
日本の歴史ものに現れる登場人物は、常に天皇や将軍、貴族や武士のような上流階級。たまに芸能民や宗教家が出てくるぐらい。この話の主人公たちは現代に暮らす私達に繋がる普通の人たち。(実際、今も子孫の方は、商店を営んでる)
江戸時代の伊達藩を舞台に、村の貧しい人たちを救う為に、やや金持ちの農家や庄屋たちが集まり、財政難の藩に金を貸して利子を稼ぎ、分配しようとする実話。
誰を攻撃するわけでもなく、人への愛と絶対屈しない心を貫いた「ヒーロー」です。
こんな人が親の親のその先の先祖にいたと思えることはどれほど素晴らしい事でしょう。世界に誇る社会の発展もいいですが、私はこういった人々を誇りたいです。
原作はこちら。
『殿、』の主人公、穀田屋十三郎他、中根東里、大田垣蓮月の3人について書かれており、いずれも心を打つ内容。
音楽、映画の世界では、聖書やギリシャ神話からモチーフを得るのは普通ですが、日本人としての引き出しもしっかり持っておきたいところです。
問われる、人間としてのアイデンティティ
『シュメルー人類最古の文明』
さて、IT技術が猛烈に進化し、AI、バイオ、宇宙など、次元レベルで人類の視野が広がっている時代。
国籍、民族アイデンティティだけでは追い付かない感もあります。
逆に、そういう時代こそ伝統やルーツから学ぶ事の意味があるとも言えます。
テクノロジー、つまり技術のルーツはどの時代のどの社会なんでしょう?
以下は今に繋がる人類文明のルーツである「シュメル文明」について書かれた本です。
衣食住、社会の仕組み、宗教、、ありとあらゆる文明のひな型が多くみられます。
もちろん日本の文化も源流を辿ればここに辿り着きます。
日本という国は、滅ぼされたことがない国なので、古い習慣が多く残っている。
欧米人や中国人が日本に旅行に来て感じる「懐かしさ」は意外とシュメル時代からのルーツが共通しているからかもしれない。それは、私達日本人が、沖縄の唄に魅かれたり、アフリカの旋律に民謡との共通点を感じるのに近い事でもある。
『サピエンス全史』『ホモ・デウス』
『サピエンス全史』は、「人間」を万物の長として、当たり前の存在として見なさず、根本から問いかけます。あらゆる動物や、類人猿が滅ぶ中、地球環境にまで影響を及ぼす存在となった「ホモ・サピエンス」。その原因を、「想像力」に見るところが新しく面白い。
AI(人工知能)が登場し、もっと進化を遂げた時、頭脳、身体運動、はては音楽まで、自分たちより優れた能力を持つ存在を目の当たりにして、人としてのアイデンティティをどこに求めるのだろうか。
同じ著者の『ホモ・デウス』は、この歴史観の先に見える現在、未来を考察しています。
このような書籍は、映画や音楽にも影響を与えてる事が伺えます。人工知能とバイオテクノロジーとITが高度に結びついた時、「人間」のアイデンティティさえ危機を迎えます。
『ブレードランナー 2049』には、『ホモ・デウス』に近い発想のシーンや設定が見られます。人口知能、バイオテクノロジーによって生み出された「レプリカント」と人類の対立が描かれる伝説のSF映画の続編。前作の舞台は2019年だ。
もとの『ブレードランナー』は、原作小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1977年)に、人間と対立する人工生命が、人間のような心を持つような、つまり人類の文明が神の領域、自然にまで届く未来を創造した作品。
『火の鳥』
漫画界の神、亡き手塚治虫のライフワーク。
永遠の命を持つ「火の鳥」を巡って、過去と未来を行き来し、紡がれる物語。
日本、人類、、宇宙、、宇宙時代、AI、バイオ、、天才の想像力と創造力は果てしない。。
今月より、作者による幻の原稿から、櫻庭一樹によって新たに生み出された小説連載も開始。この時代に「火の鳥」をどうやって作り出すか。ワクワクします。
最後に、、
アーティストが生み出す「未来のアイデンティティ」
昨年、RADWIMPSが「HINOMARU」という曲を発表し炎上や論争が起こった。
その時、ミュージシャンや音楽にとっての「ナショナリティ」つまり、「国」に関するテーマについて、まとめた文章を書きたいと思ってきました。
日本人として「誇り」を表現するのに、戦いの勇ましさ以外にも、引き出しがあってもいいんじゃないかと。
『君の名は』により、世界中に曲が届くアーティストとなった彼らは、世界を舞台に活動できるポテンシャルを持ったアーティストだ。一昔前なら、日本語で歌っている時点で海外では売れないと皆が考えていた。
しかし、今、世界中のチャートでスペイン語や韓国語の曲が多数ランクインしている。日本語の曲も、リズムに上手く乗せていく事で違和感なく受け入れられることは十分考えられる。日本のSpotifyでも、プレイリストで洋楽と並べて違和感のないJ-POP曲が求められる。
K-POPグループBTSのメンバーは『君の名は』の大ファンで、USのダンスポップに混ぜて、RADWIMPSの曲をプレイリストに入れた。
国内外を隔てない発信。これは必ずしもクオリティの問題ではない。言語でもないと思う。メンタリティやアイデンティティの要素が大きいのではないか?
日本人として「誇り」を表現するのに、戦いの勇ましさ以外にも、引き出しがあっていい。そんな事を考えて一番に思い浮かんだのが『殿、利息でござる!』でした。ぜひ、観てください。
もちろん、勇ましさも日本人の中にあるので、そういう歌があってもいいと思います。「HINOMARU」も政治的な理由で否定したくないです。アーティストが挑戦することは肯定したい。
さらに:未来を創るイマジネーションの力
そして、時代の変化の波は、遡るべきルーツや歴史を「日本」という2000年~1万年ぐらいの歴史を超えて、生物学的な「人間」としてのアイデンティティまで問いかけてきます。
「人工知能」「宇宙」「生命(バイオ)」
これらのテクノロジーの進化が急激な今の時代、ローカルな歴史も大事ですが、地球規模での視点も大杼な事を痛感します。
下の動画は、Space X社の「Falcon Heavy」のテスト打ち上げの動画です。
デヴィッド・ボウイの1972年の曲「Starman」が2:45~使われています。(赤い車でマネキンのStarmanが火星へドライブするという、凄い企画)
デヴィッド・ボウイは、1969年にアポロ11号が月面に着陸した9日後に「Space Oddity」をリリース。71年「Life on mars?」72年「Spaceman」をリリース。それから約40年後の2018年に人類の火星移住を目指したロケットの打ち上げに曲が使用されているというドラマチックな展開。
アーティストや作品は、未来をイメージし、進化へのインスピレーションを与える。『サピエンス全史』で書かれた、人類が進化を遂げた最大の理由である「想像力」こそが、人間の最大の力かもしれない。音楽に関わる者として、想像力、創造力を大事にしていきたいです。
ちょっと話が飛躍しましたが、今後もっと飛躍していかないとと思います!
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