2月12日に行うニューミドルマン・コミュニティでのイベントに向けて書いてきた、このテーマでの記事の3回目。
音楽が「フェイク」や「ヘイト」を超えるか?というテーマを掲げていますが、超えなければいけない。もっと言えば、音楽や生活を含め文化がターゲットになっている。そこから守らないといけない。超えなければいけないと思っています。
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生活に不可欠なインフラとなったSNS
大手SNSは、すでに社会的なインフラとなっている。
私はTwitter、Facebook、YouTubeを生活に欠かせない「水道、ガス、電気」と呼んでいる。また、バスや鉄道のような移動手段でもあるでしょう。
にもかかわらず、各企業の利益追求中心で運営されている状況は、狙われやすく非常に利用されやすい。危険な状態であると思います。
TwitterやFacebook、Google(YouTube)といったSNSやCGM(Contents Generated Media)は、アクセス数や再生数、アクティブユーザー数などのPVを基準に価値を生み出している。嘘でもいいから人の心を揺さぶる「フェイク」と怒りの感情を煽る「ヘイト」は、このPVを生み出す。
アメリカ大統領選挙における、様々な出来事はそのことを表わしていると思います。
文化がハックされている
前回の記事で書いた、イギリスのEU離脱、トランプ大統領の誕生など、ケンブリッジアナリティカ事件から私が考えたいのは、これらの事件で文化が利用されたことの危険さです。
「情報兵器」は、虚実入り混じり、アンダーグラウンドからマスメディアまで、嘘とふざけで驚きと炎上を起こし、人の「心」を動かし続けている。
数字を稼ぐ投稿はSNSプラットフォームにとってお得意様で、再生数の多い動画には、広告がつくことによって、動画主は収入を得られる。
かって、匿名掲示板で悪態をついたり、嘘を元にして誹謗中傷したりはストレスの発散や承認欲求を満たすことが目的でした。
今、「フェイク」や「ヘイト」は、そんな次元を軽く超えて、「不快なコンテンツほどバズる」金が稼げる広告ビジネスとなっています。そして、そのビジネスをだれも止めないどころか、成功者を数多く生み出し、拡大し続け社会政治を動かしています。
匿名掲示板、不正な個人情報の入手、マイクロターゲティング広告の悪用。
これらの問題に対して、大手IT企業は、厳しい理念を自らに課さなければいけないが、アクセス数、再生数、PV主義で広告利益を上げるビジネスモデルを持つプットフォームにそれが出来ると信頼できるのか?信用を失っている。
すでに、言ったもんがち、やったもん勝ちの世の中を生み出してしまっている。それが自由競争だと言う意見に対して、ロビー活動や献金、研究科による論陣を張り巡らさし、法的に優遇を受けているという指摘もある。
TVの世界でも、番組側が数字を稼ぐために誇張した表現や事実と異なる情報を流したり、ヤラセ、つまり「フェイク」を行う場合がある。これらが発覚した際、番組側や放送局、さらにはスポンサー企業も責任が問われる。BPO(https://www.bpo.gr.jp/?page_id=912)放送倫理・番組向上機構は、NHKと民放によって、放送の質を向上させる活動を行っている。
自己規制?法規制?SNSのモラル、ルールはどのように課されるべきか?
こういった団体の設置やルールの設定をインターネットにも適用するべきだという考えがある。しかし、制限が、表現の自由を制限したり、コンテンツをつまらなくする可能性がある。インターネットは、既存メディアが見落としたり、扱えないような情報をユーザーが発信できるからこそ、誰もが平等に知識を得られたり、考えや意見を発信できる。規制を行うことで、既存メディアと変わらない情報傾向となり、多様な意見や表現が自由にい行き交うことで起こるイノヴェーションや進化の芽が失われるのではないかという考えだ。
不快なコンテンツほどバズる、つまり広告ビジネスを促進するために、バズるコンテンツにブレーキをかけたくない、再生回数や閲覧数が増えることを止めたくないというジレンマに陥る。
「Free」の終わり、その先?
つまり、誰もが、インターネットで自由に無料で情報を入手できる。そして、ネット企業は数字のために何をしてもいい(Free)。そのような理念の良い面、悪い面を考えないといけないだろう。
急速な発展やそれまで無かった新しいサービスに法整備が追い付かないことをいいことに、権利侵害、人の所有物を使って広告収入を得たり、違法な行為を行い、裁判に負けるまで、その行為を止めない。また、支払いも可能な限り安く済ませようとする。このような破壊と創造の繰り返しに世の中は疲れてきているかもしれない。(自分だけ?)
アメリカにおいての、ユーザーの発信やコンテンツに関しても責任を負わなくていいという。『通信品位法』230 条の改正も議論となっている。プラットフォームは社会的責任をどのように担っていくのか?担わずにはいられないだろう。
音楽とITに起こったこと
ここで話を音楽ビジネスとITに移そう。サブスクリプション・ストリーミングサービスで公式の音源聴き放題を作り上げたのがSpotify。違法ダウンロードに悩まされ、売上が落ち続けた音源ビジネスをV字回復させ、音楽ビジネスのデジタル化を軌道に乗せた。
また、2019年ごろから、音楽ヒットを次々と生み出し、日本でも新人アーティストを世に出したTikTokは、金銭発生はないが、公式にレーベルと契約を結び、動画作成の機能に音楽メニューを設置している。
音楽シーンにおいては、度々アーティストがITプラットフォームへ異議を唱えることがある。テイラー・スウィフトがApple Musicからの報酬について講義した事、Spotifyの無料プランについて反対した事、これらは、いずれも「無料」(Free)についての反対意見として、大きな影響力を発揮した。
楽曲配信に関する苦言と提案が与えた影響力。【テイラー・スウィフトの金言vol.3】 | Vogue Japan
また、2017年、Spotifyは白人至上主義を唱えるバンドの音源を削除した。
「違法なコンテンツや、ヘイトに賛同したり、人種や宗教やセクシュアリティーに対する暴力を煽るような楽曲は容認しません」といったコメントを米ビルボードに回答している。
また、同年、性的暴行の疑惑がある、R・ケリーやXXXTentacionといった人気アーティストを人気プレイリストから外したことで、大きな批判を受け、人気プレイリストから外した「検閲」の撤回を行うという出来事も起こっている。
「ヘイト」や「差別」を放置してはいけない、しかし、明確な方針や責任所在がないと、音楽シーンの発展を妨害することになってしまう。Spotifyが行動を起こし、アーティストと対話が起った。こういう一つ一つ議論をして、解決していくことが大事なのだろうと思う。
音楽の世界は「嘘」に厳しい。
アーティストは常に楽曲や演奏の評価にさらされるし、それだけでなく見た目や人柄、言動、すべて厳しい目が向けられる。手を抜くとすぐ見抜かれる。嘘をつくとすぐばれる。あっという間に批判は広がり、好き放題勝手な事を言われ、心無い誹謗中傷も「アンチは人気の裏返し」。「感動」つまりは、人の心を動かすことを職業とすることはそれほど、厳しい状況で戦っていくことのだと思う。そういった長い歴史の積み重ねの中で、言葉では表せない多種多様な「愛」を歌ってきました。
何が「真実」で何が「嘘」なのか。
ボブ・ディランが言っているように、答えは風(音楽)の中。村上春樹さん的に言えば、風の歌に聴け。ですね。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
2021年、「フェイク」「ヘイト」の問題はどこか遠くの無関係な話ではなく、私たちの生活や文化にとって重要な問題です。音楽に関わる人、音楽を愛する人とこのテーマについて話したいと思い、考えを書いてみました。
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脇田敬
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著書『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』,