松任谷由実さん、ユーミンの50周年記念ベストアルバム『ユーミン万歳!』が素晴らしい。50年にわたる名曲、名作の数々はいつも素晴らしいんですが。さらなる音楽的な挑戦に注目してみました。
全アルバムがリマスターされ、ハイレゾ版もリリース済み。40周年、45周年でもベスト盤は出ており、50周年はどんなものになるのか。マニアックな話ではありますが、音楽エンタテインメントは「音」が大事、そこに注力されているからこそ『ユーミン万歳!』は輝いていると思います。
YouTubeで語りました。
★『ユーミン万歳!』のポイント
世界的なエンジニアであるGOH HOTODAさんによる
・マルチトラックからの最新ミックス
・曲によって、トラックの差し替え(松任谷正隆さん)
・ドルビーアトモス空間オーディオ・ミックス
と、「音」の面での踏み込んだ挑戦があり、そこに注目です。
GOH HOTODAさんの凄い経歴
★生配信で、音を聴きながら語るという、すごい企画
松任谷正隆さん、GOH HOTODAさん、団野健さんによる試聴会
司会:RITTOR BASE國崎さん
1時間以上にわたって、制作の中心人物3名が語るすごい企画。
日本の音楽ビジネスの大御所が作品の制作プロセスを語る動画。こういう企画が多くあれば日本の音楽シーンはもっと活性化すると思います。リットーミュージックも素晴らしい♪
Dolby Atmos 空間オーディオ
映画でおなじみのアトモス。
劇場で沢山のスピーカーに囲まれた迫力の音を家で設備するのは難しく。
イヤホンやヘッドフォンの2chでこの立体音空間を再現したのが、Apple MusicやAmazon Musicで楽しめる空間オーディオです。
映画の場合は臨場感が重視ですが、音楽の場合は違って何度も繰り返し聴くものなので、心地よさが大事かと。
2つのスピーカーで前から音が出る長年の「ステレオ」の基本がありつつ、イヤフォン2つが耳の中で真横から別々に音が入ってくる環境、その中でどう立体的な音像や表現を作るのか。
左右、前後、上下に広がる空間の中で、何の音をどこに配置するか。
各パート分離が良くなり、一つ一つの音がとてもクリアに聴こえます。
一方、音が重なったパワーが失われない様バランスも必要です。
トップエンジニアであり、ユーミンファンを自認され、全アルバムリマスタリングを担当されたGOH HOTODAさん。近年、ドルビーアトモス・ミックスも研究されたということで、今考えられる最高峰、最先端の「音」だと思います。
このミックスは、Apple Musicの空間オーディオでしか聴けませんが、このアトモス・ミックスはデジタル・テクノロジーを用いた最先端の取り組みであり、その影響はハイレゾ、CD、ストリーミングなどの音源、またすべてのデバイスで、影響を与えているので、すべてが現時点のベストの音だと言えます。
トラックの差し変え、修正
80年代後半の「シンクラヴィア時代」の固いドラムの音の差し替えについて、語られているところが興味深い。
否定的なニュアンスに聞こえるが、この時代は「ユーミン」が社会現象化し、日本が経済大国、技術大国として世界で存在感を持っていた時代。最先端の機材を用いて、世界レベルの最先端を志した作品でもあります。松任谷由実さんの歌う、日本的心情や物語感性を世界レベルの展開を目指しただろうこの時期は、ある種独特なオーラを持っていて、荒井由実時代や80年代前半までの曲「優しさに包まれたなら」「ひこうき雲」「中央フリーウェイ」「恋人がサンタクロース」のような曲とは違う文脈がある。人によっては、荒井由実時代が好き、という人もいる。
最新、最先端であり、世界中が「勝ちたい」と思ってた時代。コンピューター・テクノロジーが社会を、音楽を変え始めた時代。2020年代へと連なる起点の時代だったと思う。そんな時代に果敢に向き合い、1アーティストの表現を越えて時代の音楽を作ったことが、他の時代との違いに結び付いたんじゃないかと思う。
今回の修正により、他の時代の曲と馴染んでいる。
この頃、日本経済はバブル崩壊し長い停滞の時代へと向かう。そんな時代にも、人はどう生き、どんな恋をし、景色を見ながら何を感じていたのかということを変わらず歌い続ける松任谷由実と出会える音源になっていると感じた。
「サブスク地獄」問題が議論されたりするご時世のタイミングで、この作品が出ていることが私的にはホットなのですが。「音」という点で、デジタル音楽サービスは進化していて、CDでは表現できない世界に突入している。
ハイレゾ音源でのストリーミングや空間オーディオなど、技術革新はこの先益々起こっていく。そんな時代なので、CDは最先端というより、一時代を作ったフォーマットとしてヴィンテージ的に愛されて行ってほしいと思う。
リスナーが何を買い、何を聴くかは選択肢があるべきで、限定するものではないと思う。ビジネスサイドの人間としては、すべてにベストを尽くしたいし、どのフォーマットで聴いた人も楽しんで満足してもらいたいと思うだろう。
CDのパッケージや特典、ブックレット等すばらしいお宝商品はどんどん購入してほしい。とはいえ音楽エンタテインメントは「音」が中心であってほしいので、『ユーミン万歳!』のように、最新フォーマットでの挑戦こそクリエイティビティが発揮できるので、ファンの方々も事業者も未来に向けて新しい挑戦が継続可能な宣伝、販売、購入、リスニングを意識してもらうと、音楽シーンは、もっともっと楽しくなるんじゃないかと思います。
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こちらの記事もわかりやすいです!
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著書『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』,
経産省監修『デジタルコンテンツ白書』編集委員
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