デジタル化が生む、音楽ビジネスの急成長~「MusicTechRadar Vol.4」レポート

コロナ渦により、大きなダメージを受けた音楽ビジネスだが、音源ビジネスについては、ストリーミングを中心としたデジタル化による業績上昇の勢いが更に急上昇していくことが予想されている。デジタル化が遅れている日本においても、逆に伸びしろが大きく、コロナ渦の今こそDXを進め発展する好機と考えたい。


先日開催されたMeetUpイベントにおいて、ニューミドルマンコミュニティのフェローに就任して頂いた野本晶さんにゲストで話してもらいました。iTunesSpotifyと常に日本のデジタル音楽ビジネスを先導する役割を果たしてこられた野本さんは、現在マーリンジャパンの代表を勤められ、変わらず日本の音楽シーンのデジタル化において大きな貢献をされている。

今回のMeetUpは、デジタル時代の音楽ビジネスに日本のアーティストや音楽関係者がどこに向かっていくかを考える貴重な機会になった。

 

■ストリーミングでV字回復、そして今後の急成長

野本さんが参考資料とした投資会社ゴールドマンサックスが発表したレポートをによると、世界の音楽ビジネスは2030年には2倍以上の規模となるそうだ。いまだに「CDが売れない」ことが、話題の中心である日本の業界にはピンとこない話かもしれないが、ゴールドマンサックスが音楽業界に忖度したり、数字を盛ったりする理由もないので、データ分析の結果の予測としてはかなり妥当なのだろう。

この根拠となっているのが、近年、SpotifyApple等の有料会員数の大きな伸び。この伸びが、デジタル音楽ビジネスの未来をポジティブなものにしている。特に2017年のSpotifyの伸びは大きなインパクトとなった。Spotifyが音楽ビジネスを変えたと言われるのは、この点だろう。音源ビジネスが成長し、ライブビジネスを抜き、音楽ビジネス全体の中で大きな割合を占めると予測されている。

 

■デジタル化がもたらす音楽ビジネスの成長

今後、さらに大きい歴史的な売上上昇が起ると予測されている。世界的に見ると、2020年は18%上昇が予測され、2030年には、先進国2倍、発展途上国3倍の規模となっていくと予測されているそうだ。

ストリーミングを中心とする音源ビジネスにおいては、新譜と旧譜の割合が半々ぐらいになる。このことは歴史が長いレーベルが有利といえる。このロングテールの売上はレーベルに高い利益率をもたらす。

還元率も現時点では高い。現在も、プラットフォームは原盤出版合わせ、2/3をレーベルに返している。規模が大きくなることで収益は伸びていく。

また、今時の若い層は、音楽にお金を使わないという言説が良く聞かれる。果たしてそうだろうか。ミレニアム世代18-34歳は、音楽にお金を使うと分析されているようだ。

このような急成長は日本ではイメージしにくいかもしれないが、まぎれもなく今進行している。これも、音源ビジネスの今後の成長の好材料となっている。

 

■日本はどうする?

デジタル化により、業績をV字回復させ、これからの急上昇を予測される世界の音楽シーンから、約5年遅れていると言われる日本の音楽ビジネスにとって、デジタル化(DX)は緊急の課題と言える。

野本さんからは、取り組むべき3つの課題が話された。

 

Be Digital (デジタル!)

確実な成長分野、デジタル分野の優秀な人材の育成、確保。レーベルの規模に合わせたディストリビューションにおいて、デジタルに強いスタッフを確保して、いかに動かすかが成功への鍵となる。

Be Glocal (グローカル!)

海外(グローバル)、日本(ローカル)の2つはすぐ理解できる、もう一つ重要なのはグローカルだ。「世界のローカル」、つまり、海外の国々もそれぞれのローカルなマーケット特性を持っており、そこを攻略することが、重要なのである。日本の音楽ビジネスは、日本向けのマーケティングは上手だが、海外のローカル対策がこれから必要となる。

Be Independent(インディペンデント!)

効率的なマーケティングプランを考えるためには、カンや感情に頼らず、冷静なデータ分析が必要。驚くべき発達を果たしたツールを活用していくことが必要になるだろう。

 

現在成功している海外の音楽ビジネスは、現状認識、データに基づいた分析、決定している。日本の音楽ビジネスが、急上昇の波に乗り、飛躍を遂げるためには、これらに取り組んでいくことだろう。

 

2000年代、2010年代を振り返る。
日本のデジタル化の遅れはなぜ起こったか。 

さて、未来を考えるには過去も振り返りたい。

2004年より7年間iTunes、2012年Spotifyに転職され、各レーベルとのライセンス交渉を担当された野本さんは、進まなかった日本の音楽ビジネスのデジタル化について、何が起こったかを一番肌で感じた人かもしれない。

 

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■iTunesMusicStoreは、なぜ日本で成功できなかったか

パソコンにある、音源データをiPodに入れて、大量の楽曲を持ち運べ聴ける。Appleが起こした音楽リスニングの革命は、次にiTunes Music Storeの登場により、インターネットで楽曲データを購入するプラットフォームへと大きな進化を遂げた。アメリカでは、ネットでの違法コピーやスーパーでのCDの安売りにより、CD販売店が次々と倒産する中、iTunesは音源販売の救世主となった。

しかし、そんなiTunesも、CDが売れている日本においては緊急の需要は無かった。また、レコード協会加盟各社が、レコード会社直営(レコチョク)で先行し、カタログの充実、i-modeの強みなどによって配信市場を独占した。これらの要因によってiTunesMusicStoreが音楽市場上位の国の中で唯一大きな成功ではない国となった。なぜ、一部の日本のレコード会社は楽曲ライセンスを許可しなかったのか?それは、制作から流通まですべて支配する日本の業界体制は、プラットフォームをAppleに持っていかれたくないと考えたからではないだろうか。また、iTunesの販売価格を巡って、合意に至らなかったことも大きいだろう。当時iTunesは1曲99セントつまり150円での販売を希望し、日本ではレコチョクで300円~400円で販売していた。この差は大きい。

その後、日本での、レコチョクの成功、iTunesのつまづきは、2010年頃からのスマートフォン時代の到来によって大きく状況が変わる。ガラケーに依存したレコチョクは急速に売り上げを落とす。iTunesは数字を伸ばすが、音源ビジネスの中心となることはなかった。2010年に始まるAKB48選抜総選挙に代表されるCD特典会商法によるCDの延命、音楽リスニングにおけるYouTube、違法サイトの上昇の時代へと繋がっていく。世界が、Spotifyの普及によるサブスクリプション型ストリーミング時代へと移行していくが、日本の2010年代はCD,YouTube、違法サイトの時代となってしまった。 

 

Spotifyの日本での苦戦

野本さんは2012年Spotifyに転職、日本のレーベル各社と交渉を行う。違法音源を撲滅するという目的を掲げ、優れたユーザー体験を実現したSpotifyは音楽業界の救世主となっていくのだが、日本の音楽ビジネスは、世界で最もCDが売れる国としてフィジカル売り上げに依存した。ガラケーでの着うた成功体験もあり、サブスクを好意的に考えられなかったのだろう。

また、Spotify本国も、トップ3の邦楽の1つが揃ってない段階でスタートするべきではないというカタログへのこだわりがあり、サービススタートが2016年まで行われなかった。日本でのサブスク・ストリーミングのスタートは2015年。Apple Musicは、有料サービスとして先行スタート。世界でもレアなAppleが先行した国となり、現在、日本の有料会員の2/5はApple Musicである。ちなみに2位はLINE MUSIC。ソニー、エイベックス、ユニバーサルが出資するレコチョク的なポジションだ。現状大きな成功を収めているとは言い難い。LINEというユーザーベースの強さを持つ強みをサービスに活かしてほしいと願う。

世界各国でストリーミングサービスによる音楽市場の上昇を成し遂げたのは、Spotifyの無料プランから有料プランへと誘導する驚異的なコンバージョン率の高さだ。そのSpotifyの強みだが、日本の業界人、ユーザーにまだ理解してもらえていないのは残念だと野本さんは語る。

また、皆同じ曲を聴きたい日本人と、自分だけが知っている曲を求める海外のリスナーとのリスニング傾向の違いも今後の課題となるだろう。

 

■上昇する有料会員数

現在サブスクリプション型ストリーミングの日本での有料会員数約1500万人。邦楽アーティストのカタログも揃ってきており、会員数が2000万クラスに乗れば、弾みがつき、音楽シーンを上昇させると野本さんは考える。各国では、あるタイミングで一気にこの数字が伸びている。日本は、今のところ、ゆっくり右肩上がりであり、急上昇は、まだ来ていない。それは遠くないと予測している。

 

■価格

1か月980円という値段は先進国中世界一安い。世界の基準からすると1480円。つまり、かってのアルバム1枚分だ。毎月1枚アルバムを買うのと同価格と考えると妥当なのではないだろうか。音楽ファンにとっても、この1480円が高いとは思わない。しかし、日本では980円でスタートしてしまった。この日本の値段感覚を「ガラケー時代の呪縛」を感じさせる。この設定が今後、日本の音楽ビジネス、音楽シーンにどのような影響を与えていくのだろうか。

 

■マーリンについて

最後に、野本さんがジャパンの代表を勤めるマーリンについて説明したい。

最初に書いたように、世界的には、音楽ビジネスは上昇段階に入っている。「マーリン」とは魔法使いから命名され、デジタル時代の音楽ビジネスにおいて、みっちりと修業を積んだ魔法使いが目標を実現していくイメージだろうか。マーリンは、「グローバル」「インディペンデント」「デジタル」の3つの柱を掲げる。つまり、グローバルなインディペンデントなレーベルのためのデジタル代理店といった存在だ。

インディペンデント、つまりインディーレーベルの事だが、3大メジャー(ユニバーサル、ソニー、ワーナー)以外のレーベルのこと。SpotifyApple,YouTubeなど、全世界で強大なプラットフォームに対して、個別に交渉すると負けてしまうが、団体交渉を行うことで好条件を勝ち取る為に設立されている。世界の音楽配信の主要な30サービスと交渉、団体になることでより良い条件を勝ち取る。手数料はわずか1.5%から3%。運営費のみの非営利団体だ。加盟レーベルは、メジャーでなくても、好条件で、自分たちの音源を世界に届け、最新の情報を得る。インディーとはいうものの、日本の業界でのメジャーレコード会社クラスの会社が対象のサービスだが、世界の音楽シーンのカギを握る動きとして知っておきたい。

 

■最後に。。。デジタル化時代の流れを読む冷静なビジネス戦略が求められる

世界的な大型プラットフォーム企業の力が増し、巨大な力を持つ時代に我々は生きている。ストリーミング時代の到来で、プラットフォームに自国市場を握られたくないという考えにより、世界の趨勢に逆らい鎖国的な対応をとってしまったツケと向き合っていく時期が来ているだろう。
ユーザー体験が遅れ、アーティストもリスナーも世界の流れから置いていかれてしまった。今後、日本の音楽ビジネスが成長するためには、国内での成功体験に固執せず、プラットフォームを使ったイノベーションも視野に入れた冷静な戦略が必要ではないだろうか。

2020年代は始まったばかり、ここから急ピッチで世界の流れをキャッチアップし、日本の音楽を世界に発信する未来に繋がる行動を起こしていきたい。同じ思いを持つ人たちと出会いたいと思う。

 

■告知
次回のイベントのゲストは、NMMコミュニティもう一人のフェロー、ゲストに伊東宏晃さんをお迎えします。

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小室哲哉氏の現場マネージャーからキャリアスタート。 1998年よりエイベックス グループ内に「tearbridge production」を立ち上げ、長尾大多胡邦夫BOUNCEBACKなどの当時無名の新人作家を育成し、 作家プロデュースチームを組織化し社内外問わず数々のミリオンヒ ットをプロデュース、 またマネジメント会社代表としてSentimental Bus、ROAD OF MAJORSEAMOmihimaruGT木山裕策Beverlyなど個性豊かな実力派アーティストを発掘、育成、 ヒットへ導く。 アーティスト、音楽作家、クリエイター、 アスリート等のマネジメントから新人開発、レーベル運営、また、 FC、MD、 ECなどのプラットフォームビジネスまでエイベックスグループにて360度ビジネスの経営に携わる。 現在はtearbridge production株式会社 代表取締役

常に先進的な考えで日本の音楽ビジネスを支えてきた伊東さんのお話楽しみです。

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日本が乗り遅れたグローバル音楽ビジネス潮流 -「MusicTechRadar Vol.3」レポート

世界の音楽ビジネスの売上が上昇している。

この好調傾向をけん引するのはサブスク・ストリーミングサービスだ。
ところが、活況な音源ビジネス業界において、主要国で2019年唯一下降したのが日本なのはご存じだろうか。大きな理由の一つは、特典会商法でフィジカル(CD)を延命させた「ガラパゴス」状態が、サブスク・ストリーミングを中心とするオンライン対応への著しい遅れをもたらせてしまったことだろう。

「サブスクは儲からない。CDが売れなくなる。」

ビジネス側、アーティスト側、リスナー側も、このような誤解から、乗り遅れてしまったのが日本の音楽ビジネスだ。
さらに、ご存知の通り、このパッケージやライブといった「リアル」への偏重が、現在のコロナ・ショックの打撃をモロに受ける結果となってしまった。

しかし、世界はもっと先を進んでいる。サブスク解禁さえすれば業績が上向くかと言えばそんな簡単な話ではない。それは前提だが、もっと先なのだ。

業績を好調化させた欧米の音楽シーンの縮図といえるMIDEM(国際音楽産業見本市)にで行われていることについて、MIDEMの日本窓口である鈴木貴歩さんから、2周3周の周回遅れの日本の音楽ビジネスに何が足りないのかがわかる、貴重なお話を聞けたのでレポートしたいと思う。

 

MusicTech Radar Vol.3 「MIDEMから学ぶ世界のMusicTech最前線」

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鈴木貴歩さん(ParadaAll代表)にお話し頂いたのは、私が関わっているニューミドルマン・コミュニティの月一回のMeetUpイベント「MusicTech Radar Vol.3」(5/10)。

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「エンターテック」の提唱者 鈴木貴歩さん
鈴木さんは、TAITO→MTVジャパン→ユニバーサル→独立、、と、日本独自の”音楽×デジタル”の元祖である「着うた」事業から、MTVやユニバーサルミュージックでの世界音楽シーンとの接点を多く経験された経歴を活かし、現在「エンテーテック」を掲げ、音楽エンタメのデジタル化をリードするParadeAllの代表として貴重な発信や、多くの企業への協力を行っている。ニューミドルマン・コミュニティでは初期より、その見識や最新の情報を提供して頂いている。昨年より、今回のテーマであるMIDEMの日本窓口を勤められている。

 

50年以上の歴史を持つ世界最大の音楽見本市

MIDEMは、フランスのカンヌで行われているMarche international du Disque,de L’Edition Musical et de La Video Musique の略称。日本語だと国際音楽産業見本市。50年以上の歴史を持つ、音源、出版ビジネスにとって重要なイベント。日本の音楽業界にとっても、このMIDEMで存在を知ったアーティストを日本で売り出したり、ライセンスした楽曲を日本でカバーしヒットさせたりしてきた歴史がある。昭和歌謡から、ディスコ、ユーロビート、クラブミュージックなど、USヒット曲以外のヨーロッパ発の音楽が、このMIDEMを通じて日本に届いてきたと言える。
時代は変わり、近年、アーティストや楽曲のプロモートに加え、デジタル時代における音楽ビジネスのエコシステム構築を推進する重要な役割を果たしている。

 

国ごとの管理からボーダレスになった音楽ビジネスに対応

これを読んでいる人にとって当たり前の話だが、現在の音楽ビジネスは、サブスク・ストリーミングやYouTubeのように、オンライン中心のグローバル・ビジネスに移行しているため、既存の音楽ビジネスの国ごとに団体管理されたレーベル、権利団体、によっての動きだけではスピーディな対応は難しい。

【音源・著作権ビジネスのゲームチェンジ】
レコード会社中心の音楽ビジネス、コース料理→アラカルトへ

鈴木さんは、音楽ビジネスの潮流を「バリューチェーンの”アンバンドル化”」と指摘する。かってアーティストは、レコード会社との契約により、制作、宣伝、流通に至るまですべての過程の業務を委ねていた。それはレストランのフルコースを思わせる。前菜からメインまでのお任せだ。
しかし、デジタル時代の多様化した音楽ビジネスで起こっていることは、このようなお決まりのパターンではなく、アーティストやジャンル、リスナー傾向に合わせ、ケースバイに業者を選び組み合わせた、アラカルトメニューのような手法だ。
楽曲を配信はTunecoreのようなディストリビューターを使い、並行してCDや既存メディアへの宣伝等を得意とするメジャーレーベルと契約。さらにマーケティングツールを使い、自前で戦略を立てるなど、それぞれの業者や自前を組み合わせビジネスを構築する。

代表例として、インディ・アーティストの楽曲を全世界に配信するディストリビューターThe Orchard(ジ・オーチャード)は、K-POPグループのBTSの成功により、JYPともグローバル契約を締結。自前で音源の権利を持ち全世界をターゲットに柔軟にビジネスを展開するK-POPグループ、そして、このThe Orchardのような会社は、著しく成長を収めている。

オンラインでの透明性の高い数値の共有、データ分析などを提供し、アーティスト側の活動をサポートするこれらの会社は、テクノロジーとクリエイティブを結び付けている。

MIDEMでは、こういったレーベルサービスの最新動向を各カンファレンスで、当事者の登壇でのトークで報告されている。

 

【音楽スタートアップがビジネスを前進させる】
ピッチイベント「MIDEMLab(ミデムラボ)」

音源や著作権ビジネスの最前線の動向とともに、MIDEMで注目のポイントは、音楽スタートアップ企業シーンを輩出してきたMidemlabだ。ドイツ発のサービスSoundCloudのように、このMIDEMから世界に広がったサービスも生み出している。 
2008年にスタートした音楽スタートアップのピッチイベント「Midemlab」は、10年以上続き、数々の有名な音楽スタートアップを発掘し、世界に広めることに役立っている。Appleに買収されたASAIIや、Songkick、Echonestなど多くが、このMidemlabのファイナリストになり、このMidemlabにより広く紹介されている。

ストリーミング中心の音楽エコシステムをけん引したSpotifyに代表されるように、2010年代は、音楽スタートアップの存在が、アーティストや音楽企業のビジネスを豊かにする役割を果たしている。

 

Midemlabの4つの部門は以下の通り

・エデュケーション&クリエーション部門(教育、制作)
マーケティング&分析部門
・ミュージックディスカバリー/ディストリビューション部門(流通、マーケティング
・エクスペリエンス&テクノロジー

 


2020のファイナリストはこちらで
https://www.bakery-lab.tokyo/2019/05/midemlab-finalists/

斬新なサービスも大事だが、地味に見えるが、アーティストや権利者の収益を増やすような、音楽エコシステムに貢献するスタートアップが評価されている。
この姿勢は音楽ビジネスに携わる者にとって非常に重要に思える。

 

その他、Midemlab情報
https://www.midem.com/en-gb/innovation.html

(日本語)https://www.facebook.com/midemjapan/

 

音楽スタートアップへのアドバイス

音楽ビジネスとテクノロジーがより結びつき、発展するためには?

・課題解決、特に業界のペインポイント(弱点)を理解し、テクノロジーで解決
・アーティスト、作家などクリエイターのブレイク、収益改善、効率化を支援する
・新しい価値を創出する

スタートアップが考えるべきこと・・・音楽ビジネスにインクリメンタルな価値・・・つまり、これまでにプラスした収益やメリットを与えられるか?が大事。

逆に、業界側も課題、弱点を開示して、協力を広く仰いだほうがいい。課題や弱点がわからないことには、スタートアップ側も的外れな開発に労力を注ぐことになり、せっかくの音楽の未来に貢献したいと考える起業家たちの熱意が無駄になってしまい、音楽ビジネスが時代に取り残されてしまうことになる。

 

新しい音楽ビジネス・エコシステムの理解
世界には標準のデータセットがある

全世界を一瞬で駆け巡るネットにおける音楽流通の時代に、ビジネス面でも世界標準のルールに沿っていないと、いくらいいアーティストや作品であっても、どこかで詰まってしまうだろう。スタートアップに必要な標準のデータセットの代表的なものは以下だそうだ。

ISRC 曲ごとのコード
・ISWC 作詞作曲のコード
・IPN 実演家のコード
・DDEX 流通の際のクリエイター表記のデータ
・CWR 作品フォーマット

大手のレコード会社や著作権団体や出版社などは、知っているだろう国際的なデータ設定だが、ベンチャー、スタートアップが切り開く時代においては、日本のスタートアップもこれらを知っていなくては、同じ土俵には上がれない。

 

【まとめ】なぜMIDEMなのか?

昨年より、鈴木さんがMIDEMの日本窓口を担当されているの知っていつつも、それがどんな意味なのかは理解していなかった。

今回話を聞き理解できた。
私たち音楽ビジネスマンやアーティスト、クリエイターは、音楽スタートアップとより良い関係で、デジタル音楽エコシステムを発展させていかなくてはいけないのだ。
音楽の収益を上げるためには制作・宣伝・営業も大事だが、加えて、起業家たちと交流し、現場で何が起こっているか知ってもらい、お互い刺激を与えあうような場が必要なのだと。私たちも、このニューミドルマン・コミュニティやTECHSなどで、それを行ってきたつもりだ。しかし、このMIDEMはそれを業界全体の規模で実現している。このマインドや行いこそが、全世界の音楽ビジネスの業績向上に大きな力となっている。日本でも音楽業界全体がスタートアップを支援することでビジネス全体を活性化するような場を作れないものだろうか?一部の人間だけでやっていても世界には追いつけない。鈴木さんはそのように考えているのだろうと思う。

 

今年は、コミュニティ・メンバーで現地で視察旅行を予定していたが、残念ながらコロナにより、リアルでの参加は無くなった。
しかし、MIDEM Digital Editionとしてオンライン開催、無料で参加できるとのこと。これを読んだ人は、日本からも多く参加し、世界の音楽市場の最前線に触れてほしい。そして、一緒に音楽の未来を切り開くメンバーとして、一緒に頑張っていければと思う。

 

 

 

そして、次回は6/7開催。

musictechradar202006.peatix.com

ゲストは、野本晶さん
マーリンジャパン株式会社 ゼネラルマネージャー
1970年生まれ。愛媛県出身。ソニー・ミュージック、ソニー・コンピュータ、ゾンバレコードジャパン、ワーナーミュージックを経て、2005年からiTunes株式会社にてレーベルリレーション担当としてiTunes Storeの立ち上げに参加。12年よりSpotifyに移籍、16年以降の日本展開を牽引する。18年に独立。19年5月、世界的なインディペンデントレーベルの為のデジタルライツエージェンシー、マーリンジャパン株式会社ゼネラルマネージャーに就任。
http://www.merlinnetwork.org/jp

 

その前に、5/31こちらのイベントも!

nmmmeetupextra05.peatix.com

 

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音楽の「対価」をめぐる最前線【レポート】NMMコミュニティ マンスリーMeetUp 「MusicTechRadar Vol.2」

先月に続き、私が運営に携わっているニューミドルマン・コミュニティが開催するマンスリーMeetUpイベント「MusicTechRadar」の2回目をレポートします。

コロナ感染防止のためリアルイベントは自粛、オンラインでの開催となった今回、先に言ってしまうと、これこそ世界の最前線で動いている音楽ビジネスの未来を予見する内容でした。

今回タイトルに「著作権wars」とあります。著作物(詞曲)、録音物(音源)の使用に関する、分配条件闘争は、この業界全体ひいてはミュージシャンやスタッフの一人一人、その先にはリスナー、ファンにまで影響する重要な問題です。


今回ゲストとして、エンタメ、スポーツの分野でアーティストやアスリートの権利や法務を担当され、数多くの実績を上げられる山崎卓也弁護士を、ロンドンより中継で参加頂きました。

山崎卓也さんは、2016年にニューミドルマン養成講座で、バリューギャップ問題について話して頂いております。その内容がデジタル書籍化されていますので、是非読んでみてください。

 

さて、今回の話も、このバリューギャップ問題と大きく関係する話です。
バリューギャップ問題とは、特にYouTubeが音源使用において、Spotify 1再生あたり0.3円ぐらい、Apple Music 1再生あたり0.7円ぐらいに対して、YouTube 1再生あたり0.07円ぐらいの分配しかしていない問題です。

このことは氷山の一角で、ネット時代が到来し、これまでのビジネスモデルやエコシステムが大きく変化した中で、音楽を使用して売上利益を上げているサービスやプラットフォームから、レーベルやミュージシャンが対価を得られてないケースが多々あります。

CDが売れなくなったが、音楽を愛する人が減ったわけではないので、制度的に音楽に支払われた対価が権利者に届いてない状況を是正する必要があるというのが、この問題であり、これが欧米のアーティストや業界での現状の課題なのです。
2019年4月にEUで可決された「著作権指令17条」は、これまでYouTubeのようなプラットフォームが問われてこなかった「コンテンツ制作者への公正な報酬」や「違法な使用などへの責任」が求められることとなった。可決から2年後の2021年4月までに、EU各国で法案化される。

このように、これまでYouTubeが逃れてきたコンテンツへの姿勢は法的に変化を迫られている。SpotifyApple Musicより遥かに低い分配、違法アップロードについて責任を避ける傾向、これらは法的に変化を迫られる。

これが世界の音楽ビジネスの大きな流れの変わり目であり、新しい時代の到来だと思う。

さて、この動きにつて、私たち日本はどうだろうか?山崎さんは、このことに関しての日本の業界の反応はとても薄い、無い事のように思っている印象があると言います。

サブスクはお金にならない、と言うがYouTubeはどうだろうか?

YouTubeはプロモーションだから、分配を気にしなくていい、と思ってはいないだろうか?YouTubeは音楽コンテンツから莫大な広告料を得ている。その分配率の内訳は不透明であり、明らかに低いにもかかわらずだ。

 

このグローバルなプラットフォームとの条件やルール交渉において、大事なのは全世界規模でのシェアや影響力を持っているかどうかだ。相手が世界なのに、日本という単位での動きでは弱い。ゆえに、Marlinのような、世界的なインディ支援団体の意味がある。(ちなみに、世界でメジャーとは、ユニバーサル、ソニー、ワーナー。それ以外はインディ。)

ITプラットフォームの台頭が、CD一強時代を終わらせ、大きなダメージを受けた2000年代、サブスク・ストリーミングの普及によって、音源が公式に流通し、V字回復した2010年代。そして今、音楽の公正な対価を求める流れが社会に認められはじめ、音楽ビジネスの新しい繁栄が近づいてきている。この動きに注目していきたい。

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一方、そんな時代に現場で活動するミュージシャンやスタッフはどんな事を考えていけばよいだろうか。

購入(sell off)から、ファン・エンゲージメント(継続的なつながり)へ、サブスク・ストリーミングを軸に、ライブ(現在は行えないが)、グッズ、FC、クラウドファンディングなど、多様なマネタイズを行う時代が到来している。

楽曲やアーティストが制作するコンテンツの価値は一様ではない。
CD時代の慣習や利益システムへの固執は新しい時代への眼差しを曇らせる結果になるかもしれない。

 

1日経って、本当に大事な話だったなと思います。
音楽の公正な「対価」とは何だろう。
デジタル・テクノロジーによって激変する環境の中で、その答えを追求し、既存の考えやモデルに囚われず、前に進んでいかなければいけないと思う。

 

 

そして、次回の予告です。

musictechradar202005.peatix.com

 

ゲストは、鈴木貴歩さん(すずきたかゆき)
ParadeAll株式会社 代表取締役 エンターテック・アクセラレーター

フランス、カンヌで毎年行われる音楽カンファレンスMIDEMについて。
本当はNMMコミュニティで視察に行く予定でした(泣)
今年はオンライン開催かもしれません。

このMIDEMの話題と世界の音楽ビジネスの最新情報を知るチャンスです。
ぜひ、ご参加を!

 

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【イベントレポート】NMMコミュニティ マンスリーMeetUp 「MusicTechRadarVol.1」

今回は、私が運営しているニューミドルマン・コミュニティの月一のイベントのレポートを書きます!

nmm.bitfan.id



【イベントレポート】NMMコミュニティマンスリーMeetUp 「MusicTechRadarVol.1」

 

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月1回のニューミドルマン・コミュニティサブスクリプション・音楽ストリーミングのサービスが世界に遅れること7-8年、日本でもやっと定着しつつある近年、改めてSpotifyに注目した。

2008年スウェーデンでサービス開始したSpotifyは、インターネット時代が到来、複製可能、違法ダウンロードの横行により従来のCDを中心としたエコ・システムが崩れた音楽ビジネスにおいて、新たな仕組みに立て直す動きをリードした。2010年代「スマホ

SNS」時代に、サブスクによる音楽経済のV字回復はSpotify無くして語れないと思う。そして、デジタル化により急速に変化が続く社会、作り手と聴き手の双方が快適な音楽体験の追求においてもSpotifyは常に半歩先をリードしている。

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NMMは2014年スタート以来、Spotifyを数多く取り上げてきた。リニューアルした毎月のイベント「MusicTechRadar」の一回目として、昨年末、Spotifyを退社された松島功さんにゲストに来て頂き、サブスク、Spotifyの現状、そして最新の動きの話を聞いた。

3月14日(土)於:朝日新聞メディアラボ渋谷
https://musictechlader202001.peatix.com/

特に興味深い話としては、プレイリストの新しい動きについての話だ。
Spotifyには、Spotifyスタッフやユーザーによる、編集された(editorial)プレイリスト、そして個々の利用者の聴取データに基き、アルゴリズムによって、そのユーザーの趣向に合わせ自動で作成された(Personarized)プレイリストの2種類がある。新しい第3のプレイリストとも呼ぶべきものは、編集されたプレイリストでありながら、聴く人によって曲目や順番が変わるという、Personarized editorial Playlistsと呼ばれる。人力とAIの融合のようなものである。サブスクが「月額聴き放題」のおトクで便利なサービスといったイメージのはるか先を行く、新しい音楽体験を次々生み出す進化するツールであることを思い知らされる。

 

他にもサブスクに関する、ためになる話が沢山あり、また、参加者から多くの質問に答えて頂いた。ここでは紹介しきれないが、当日参加者とNMMコミュニティ会員の方には、音声記録を提供しているので、興味のある方は是非そちらをチェックしていただきたい。

 

今回のイベントでは、同じく元Spotify、現マーリン・ジャパン代表の野本晶さんや、元エイベックス・マネジメント社長の伊東宏晃さん(現Teabridge Production代表)といった、ニューミドルマン養成講座の時代より、何度も講義に来てくださった心強いサポーターの方々もご来場いただきました。
当日、ミュージシャンやインディペンデントの音楽スタッフ、音楽ビジネスに興味を持つ異業種の方など、老若男女の多種多様な方々の参加があり、このサブスクを軸とした新しい音楽エコシステムの中で、素晴らしい音楽をどのように届けていくか。その後押しとなるような知識情報、ノウハウ、ネットワークを提供していきたいと思う。

改めて、サブスク音楽サービスへの興味の高まりを感じつつ、実際、どのように使い攻略するかというノウハウは、日々状況が変改していることを感じた。

次回はvol.2は、4月12日(日)。弁護士の山崎卓也さんをゲストに「グローバル著作権」をテーマに行います。このご時世、ロンドン在住の山崎さんは参加がどのような形になるか未定ですが、実施の予定です。ご期待下さい。

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メジャーアーティストも挑戦する!サブスク時代の「世界標準J-POP」

サブスク、特にSpotifyの特徴の一つに、国と国を隔てる壁を取り払い、新しいヒットを生み出すことがある。
SNSYouTubeTikTokなどと結びつき、Spotifyの持つプレイリスト機能や、優れたリコメンドによって世界中のリスナーを結び付け、グローバルなヒットを生む。
AmPmなどインディ・アーティストが海外で聴かれた事例は多く知られているが、メジャーアーティストについても、2019年サブスク解禁と時を同じくして、目立った海外アプローチが見られるようになった。

まずは、2019年、世界マーケットを意識した楽曲をリリースしたメジャー・アーティストの曲をプレイリストにまとめみた。チェックしてみてください。

 

https://open.spotify.com/playlist/4sFgR5ucklOBRe3UAKurdY?si=zvxhdr1AQ9ijiDepT0UBnQ

 

「国内向け」「海外進出」といった考えを捨てて、世界的な音楽トレンドと日本らしさを両立した「世界標準のJ-POP」を模索したこれらの曲たち。並べて聴いてみるとJ-POPの未来が見えてくるようだ。

その中から、今回の記事では3曲取り上げてみる。是非読んでみてください。
※ウラ話とかそういうのはありません。

 

 「Face my fears」宇多田ヒカルSkrillex

世界的な人気ゲーム「KINGDOM HEARTS Ⅲ」のテーマ曲としてリリースされたSkrillexとのコラボ曲。ピコ太郎以来のビルボードチャートTOP100にランキング入りを達成した。

 


Hikaru Utada & Skrillex - Face My Fears [Official Video]

Skirillexはダンスミュージック・シーンのトップDJ/トラックメイカー。ポップシーンにおいては、ジャスティン・ビーバーが現在の地位を確立した楽曲「Where are U now」でも知られる。この「Face my fears」には、もう一人世界的なヒットメーカーが関わっている。ジャスティンの殆どの曲でCo-writer、プロデューサーとして参加しているのがPoo Bearこと、Jayson Boydだ。ジャスティン・ビーバーの音楽的なパートナーと言っていいだろう。このPoo Bearを起用したことで「Face my fear」は、Skirillexのトラックのみならずヴォーカルパフォーマンスにおいても世界標準を目指した曲だ。


Skrillex and Diplo - "Where Are Ü Now" with Justin Bieber (Official Video)

そして、プロモーションとマーケティングにおいても、この曲は緻密に練られている。
オフィシャルミュージック・ビデオの英語バージョンは、YouTubeではSkrillexのチャンネル から、日本語バージョンは宇多田のチャンネルから公開されている。こういった一見細かいように見えるが、信頼関係の構築や、丁寧な交渉なしには実現しない事だと思う。

また、特設サイトを開設、世界的な広がりを可視化させている
http://www.utadahikaru.jp/hikaru_utada_songs/

宇多田ヒカルのボーダーレスなアプローチは、今回に始まったものではない。約10年間にわたり積み上げたものが、日本の音楽ビジネスにおけるサブスク解禁で、より加速したと言える。

過去に「UTADA」名義での世界デビューがあるが、これは時代が早すぎた。
2010年に過去楽曲のYouTube公開を行い全世界のJ-POPファンを掘り起こしたことが海外ファンが彼女の音楽に触れられるようになったスタートだろう。その成果は、2016年リリースされた8年ぶりのアルバム『Fanotome』(3位)、翌2017年に「KINGDOM HEARTS」とのタイアップ「光-Ray of Hope Mix-」(2位)をリリース、この2つが全米iTunesランキングで上位にランクインした。この2つで得た感触をもとに準備してリリースされたのが「Face my fears」だろう。
2018年には、アルバム『初恋』に収録されたUKのラッパーJevonをフィーチャリングした「Too Proud feat.Jevon」を、中国、ヴェトナム、韓国ラッパーを起用したリミックス「Too Proud featuring XZT, Suboi, EK (L1 Remix)」をリリースし、そして、今回の「Face my fears」へと繋がっていく。

open.spotify.com

open.spotify.com

Skrillexや「KINGDOM HEARTS」といった派手なワードに注目したくなるが、クリエイティブもマーケティングも、地に足がついた発想で行われている。

 

「Same Thing」星野源
日本を代表する人気シンガーソングライター星野源の代表曲といえば「恋」だろう。しかし、この曲のリリースも2016年、この「恋」や、その後のシングル「Family Song」「アイデア」などを収録した『POP VIRUS』は2018年にリリースされ2019年ドームツアーを実現、盛大に集大成を迎えた。国内の音楽シーンの頂上に登りつめた彼が、新たに世界標準の音楽志向を表したのが『Same Thing』のEPだ。
日本人ヴォーカリスト含む多国籍バンド、スーパーオーガニズムがアレンジ担当した「Same Thing」。ラッパーPUNPEEとの「さらしもの」、トム・ミッシュとの共作「Ain't Bobody Know」が収録。内容もさることながらリリースも「J-POP方式」に固執せず、世界と隔てないアプローチが取られている。

この『Same Thing』はデジタルオンリーのEPとしてリリース、表題曲「Same Thing」はApple Musicで先行配信し、Apple Music内の全世界生放送のラジオ”Beats 1”にて日本人初の番組を持つなど、Apple Musicでの取り組みに加え、Spotifyでは自作曲と洋邦の曲を混ぜたプレイリスト”so sad so happy”を公開している。

オリジナル曲の背景にどんな楽曲を好んでいるかを伝えながら、広がりも生み出すプレイリスト・プロモーションの定石的な手法だ。彼が選んだ洋楽曲とオリジナル楽曲を並べて聴いた時、この「洋邦を隔てないJ-POP」が理解できるだろう。

YouTubeでは、毎回お馴染みの、曲途中での宣伝挿入をやめ、フル尺アップを行っている。これも日本マーケット限定のアプローチから世界標準への変化と感じられる。


星野源 – Same Thing (feat. Superorganism) [Official Video]

 日本的な感性を持ち、言葉やメロディを操り新しい時代の男性ソロシンガーソングライターの旗手である星野源。曲調や発信方法は変われど、表現している事は変わらない。

 

「Lost feat.Clean Bandit」End of the World

End of the worldは、SEKAI NO OWARIの海外活動での名義。「Lost」は、「Rather Be」など世界的大ヒット曲を持つクリーン・バンディットとの共作、共同プロデュース楽曲。イギリスのソニー系レーベル「Insanity records」(Sony UKと総合エンタメグループInsanityとの合同レーベル)と契約しての第一弾シングル。


End of the World - Lost (Official Video) ft. Clean Bandit


2010年にデビューし、2012-2013年頃「RPG」や「Dragon Night」など大ヒットを飛ばし、トップアーティストとなったセカオワ。デビュー前から彼らが海外での活動を志向してているという発言はよく耳に入ってきた。
2014年「Dragon Night」でNicky Romeroを共同プロデューサーに迎え、大ヒット。アウル・シティの「Tokyo featuring SEKAI NO OWARI」がリリースされている。2016年には、「Lost」で共演しているクリーン・バンディットのNYとLAの公演のOAでライブも行っている。このライブでのの名義は「SEKAI NO OWARI」ではなく、End of the Worldだ。この時期から、この二つの名義を国内外で使い分ける状態が始まっているようだ。このあたり分かりにくさを感じなくもないが、以下のインタビューで語られているので、読めばある程度納得がいく説明がなされている。
(※一筋縄でいかない海外活動の大変さの一端が感じ取れる貴重なインタビュー)

highsnobiety.jp

そして、End of the World名義で「One More Night」という曲をリリースしている。この曲はアメリカ人シンガーソングライターChristopher J Baranと共作している。


End of the World - "One More Night" (Official Video)


2016年の海外コンサート、2017年「One more night」2018年「Stargazer」、韓国のHIP HOPアーティストのエピックハイとコラボした「Sleeping Beauty」とリリースしている。

このような試行錯誤の末、イギリスのレーベルと契約し、初のリリースとなったのが「Lost feat.Clean Bandit」というわけだ。この曲のリリースに合わせて開設されたHPには、2019年終わりにリリースされるアルバムからのリード・シングルと書かれているので、すでにアルバムは完成しているのだろう。

endoftheworld.jp

日本では、2019年にSEKAI NO OWARIの作品として『Lip』『Eye』の約4年ぶりにフルアルバムを2枚同時発売している。アルバムリリースのなかった2015年~2018年ごろ、国内の音楽シーンの視野で考えると彼らがどこに向かっているのか、見えにくかったかもしれないが、その間、彼らは日本と海外を行き来しながらライブを行い、外国人ソングライターやプロデューサーと共作し、試行錯誤を続けていたようだ。
日本のマーケットと海外とで好まれる音楽の違い、言語の壁、ビジネスの仕組みの違い、、これらとぶつかりながら。容易ではない道を前進している。

 


上記3アーティスト以外にも、海外挑戦には沢山のドラマがある。
是非、若いアーティストの方やスタッフの方に自分たちの音楽を「作る」「売る」ことを考える際の参考にしてほしい。
また、海外での活動、グローバルな音楽シーンと接触の多いONE OK ROCKやBABYMETALや話題となった嵐、ダンスミュージックという切り口で世界的なビジネス展開やコラボを実現させるLDH系アーティストなど、いろんな記事やインタビュー、動画が多く発見できる。このテーマで何かイベントでもやりたいものです。

引き続き、新しい動きにも注目していきたいので、この記事やプレイリストをチェックして頂いた方とは、多様な視点でディスカッションできればと思います。
SNSでも、ぜひ気軽に絡んでください。


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音楽ビジネスの2019年「サブスク、TikTok、Vtuber、ジャニーズ他」

あけましておめでとうございます。
年末にアップした2010年代を振り返った記事に続き、2019年を振り返りたい。
本年もよろしくお願いします!

wakita.hateblo.jp

2010年代がそうであったように2010年代終わりに現れた世代交代や新しいムーブメントが、2020年代にメインストリームとなり花ひらく種だ。 日々出会うニュースの数々を振り返り、また音楽制作やマネジメントの現場で感じた空気を思いながら振り返りたい。

★日本に広まるサブスク

続々と解禁されれるサブスク。
特に話題になったのは。新曲とシングルリード曲を解禁。SNSYouTubeも同時に解禁した。東京五輪における日本の顔として、海外に曲を聴かせる意味での解禁だろうと思うので、他のジャニーズグループの本格解禁はまだ先ということのようだ。

そして、年末サザンオールスターズが解禁された。日本の音楽業界の支柱的な存在であるサザンの解禁は「サブスク有り無し議論」を終わりに向かわせるだろう。

 

★サブスクがデフォルトのアーティストのブレイク

2019年新たにブレイクしたアーティストといえば、Official髭男ismKing Gnuだろう。彼らはブレイク前からサブスク公開されサブスクプラットフォームからのプッシュを受け、多かれ少なかれ、そこで支持を広げてきた。2018年のあいみょんに続き、サブスクに曲があって当たり前というスタンスでブレイクしている。米津玄師の「Lemon」やDA PUMP「U.S.A」、一昨年の星野源「恋」のような一年を代表するような派手にわかりやあすい曲は思い浮かばないが、よく言われる「ヒット曲がない」といった声はあまり聞かれない。様々なアーティストのサブスク解禁で音楽シーンの風通しはよくなり、多種多様なアーティストの曲と出会える環境が整い充実したシーンだったのだろう。

★サブスクによって、低くなる国外との壁。

嵐以外にも、宇多田ヒカルは世界的なトラックメイカSkrillexとのコラボ曲をリリース。また、ビルボードアルバムチャート12位を記録したBABY METALEnd of the world名義でClean Banditをフィーチャリングした楽曲をリリースしたSEKAI NO OWARI、海外アーティストとの共演は、星野源LDH系のアーティストなど多く見られた。コーチェラに出演し高い評価を得たPerfumeなど、メジャーシーンが積極的に海外マーケットを視野に入れたの動きが多く見られた。しかし、違うマーケットでヒットを生み出すことは簡単ではないことも明らかになった。これらのアーティストの挑戦はきっと2020年以降、徐々に日本アーティストが世界で聴かれることに好影響をもたらすに違いない。

2020年は東京五輪。日本に世界の注目が集まる。しかし、リオ五輪でブラジル音楽に興味を持った人がどれぐらいいて、そんな興味関心に応えるブラジル音楽がどれぐらいあっただろう?日本もそうならないようにと思う。

★中国ITサービスTik Tokから生まれるヒット

SNSやデジタル音楽サービスは基本アメリカや欧米のサービスというのが今までの常識だが、2018年にブレイクしたTikTok中国企業バイトダンス社によるサービス。
IT大国中国の大企業といえば、Baidu、Alibaba、TENCENT。GAFAGoogleApple、Faceook、Amazon)のように、BATと称される中国の巨大IT企業がある。これらとTikTokとの違いは、TikTokは欧米や日本、全世界で,流行っていることだ。BATは中国内の市場規模の大きさによって巨大企業となっている。中国市場に依存しない中国企業という新しい領域にあるバイトダンスがTikTokをどのように発展させていくのかに注目が集まっている。
このTikTokが2019年、Lil Nas X「Old Town Road」という明らかなTikTok発の大ヒットを生んだ。2000年代のYouTubeのように大ヒットを連発しそうだ。

★「ミーム(meme)」とは?

TikTokを語る上で欠かせない2019年のホットワードは「ミーム(meme)」だ。「お題」や「ネタ」のように、SNSTikTokで変化しながら広まっていくことを言い表す際に使われた。「Old Town Road」では、ヒップホップ・ビートに乗せて「カウボーイ」をお題にショート動画をTikTokにアップする事が流行った。これは、「歌ってみた」や「踊ってみた」のようなものに比べ、自由度が高い。「江南スタイル」や「PPAP」のバズと比べると。模倣(コピー)ではなく、創作(クリエイト)の要素が強いYouTubeの現場でよく言われることだが、動画の創作はセンス、技術、労力が求められハードルが高い。しかしTikTokのように15秒ならアイディアとセンスで創作ができる。見る側もTwitterのようにサクサクとスワイプする。時間が短縮されることで、多くの動画と出会うので、無名の動画と出会える。さらに精度の高いアルゴリズムにより個々の趣向に合わせたリコメンドも充実している。
オーストラリアのシンガーソングライターTones and Iの「Dance Monkey」は、まさに「ミーム・ソング」として、Tik TokやYouTubeSpotifyが連動し大ヒットしている。


TONES AND I - 'Dance Monkey' LIVE (Splendour In The Grass 2019)


TikTokYouTubeでバズり、気になった曲をSpotify等でチェックする。他にどんな曲を歌っていて、周辺にどんなアーティストがいるのかを知る。こうして「曲」から「アーティスト」へとリーチする導線は、サブスク時代のエコシステムの完成を感じさせる。

TikTok 最強のSNSは中国から生まれる

TikTok 最強のSNSは中国から生まれる

 

 ★ネット中継によりメディア化するフェス

フジは、去年から、サマソニは今年初、YouTubeでの中継を行った。
いずれもSoftbankがスポンサー協賛。5G(第5世代移動通信システム)時代にライブ中継というコンテンツに可能性を感じてのことだろう。
毎年、4月にサンフランシスコで行われるコーチェラ・フェスティバルYouTube中継を観ている。その年の世界の音楽トレンドを知ることができる。フェス中継で出会う未知のアーティストをSpotifyでチェックするといった形で私の音楽ライフはどんどん充実していった。また、ライブ映像はもちろん、インタビューからも音だけでは知りえない背景やカルチャー面の情報が得られる。彼らの人間面、客席の反応、フェスでの位置など。同じようにフジの中継でも魅力ある日本のアーティストにも出会えた。


BLACKPINK - Kill This Love (SUMMER SONIC2019 Tokyo - Marine Day 3)

今年のコーチェラでは、ジャズティン・ビーバーが2年ぶりにステージに上がり、同じ事務所のアリアナ・グランデと共演、飛ぶ鳥を落とすブレイク・アーティストであるビリー・アイリッシュと初対面し、その瞬間の動画は大きなバズとなった。(その後、「Bad Guy」のコラボ・バージョンをリリース)。

 

  その他にも、様々なアーティストの話題が中継やSNSを通じ世界中に発信された。
これは、かって雑誌やテレビが担っていた役割ではないだろうか。ヘッドライナーは表紙巻頭を飾るアーティストのようだ。お目当てのアーティストを観るためにアクセスして、他のアーティストに出会う。これからの時代、フェスはメディアでもある。

★増殖するVtuber

キズナアイなどの人気者を生んだVtuber(ヴァーチャル・ユーチューバー)のシーンは拡大を続けている。一部のヲタクやマニアのシーンと思われていたが、参入ハードルはどんどん低くなり誰でもVtuberになれるチャンスがある。逆に企業が収益を上げるのは簡単ではなくシーンは拡大しているのと逆に撤退する会社も見られる。個人Vtuberは、かってのニコニコ動画のように、歌い手、ボカロP、絵師、動画師、といったように、魂、イラスト、モデル、作曲家といった人たちが配信プラットフォームやTwitterなどでネットワーク的に結び付き、創造や発信する段階にある。ライブ配信アプリのSHOWROOMによる「SHOWROOM V」などに見られるように、さらに簡単になっていくだろうVtuber。この先にある未来は、かってのアメーバ・ピグのような、誰もがアバターを使って、人とコミュニケートした時代のヴァージョンアップしたものかもしれない。

私事だが、9月のイノフェスのトークセッションで「Vtuberやりたい!」と宣言した。が、まだ何も出来てない。美少女キャラクターになって音楽ビジネスの知識を語れば面白がってもらい注目されるのではと思っている。冗談ではなく、いろんな情報や知識スキルを手軽に面白く発信するツールになり得る可能性がある。

campaign.showroom-live.com

★変化する芸能界(ジャニーズ、吉本、AKS

ジャニ―喜多川氏が亡くなり一つの時代が終わったと誰もが感じている。関ジャニを脱退した渋谷すばる錦戸亮は、脱退後早々にライブやアルバムをリリース。かってジャニーズを辞めたタレントはこのスピードでここまでのことは出来なかった。ジャニーズという巨大企業が崩壊するとは思わないが、「ジャニーズ」という統一感のあるブランディングは薄まり、それぞれのグループ毎に個性を育てブランディングする普通の?大手プロダクションになっていくのだろう。

www.youtube.com


吉本興業AKS(NGT)などにまつわる事件は、芸能界のマネジメントが変化の時期に来ている事を感じさせた。求められているのはファンへの丁寧な説明だろうと思う。事務所やタレントは誠意を持って事実や気持ちを伝える努力さえすれば理解してもらえると思う。このことはプロであればそんなに難しい事ではないのではないか。新しい芸能界の動きに期待したい。

 ★違法業者の取り締まり

2018年、高額チケット転売問題で「チケットキャンプ」が摘発。→2019年は「漫画村」運営者が逮捕された。「漫画村」のトピックは音楽から少し離れてしまうが、IT業者によるコンテンツの権利者無視という点で同じだ。ネットで法の目をかいくぐり、インターネットの「フリー」の思想を盾に、アーティストや作家の権利を無視して、広告収入で巨利を得る業者は今後出なくなってほしい。音楽においても、6月に、日本レコード協会など4団体、4つの配信会社が、Appleに対し、Music FMなど音楽違法アプリへの対策強化の要望を出した。

japan.cnet.com

やっと業界や行政が動き、公式に、これらが「悪い事」だと認定されたことになる。大物アーティストのサブスク解禁と合わせて、ネット時代においてもクリエイターや権利者に使用料が支払われるべきだという意識はファンやアーティスト、業界に浸透し、やっとネットの利便性を享受できるオファイシャルなサービスを楽しむ形が出来つつある。

K-POPも進化する

相変わらず日本で大人気のK-POPが世界的にも人気と評価を獲得している。グラミー授賞式にも出席するなどBTSは押しも押されぬワールドクラスのスターなのだと実感する出来事が多く見られた。そして、BTSに続くスター候補としてBLACK PINKが全世界メジャー展開。コーチェラの大ステージでやユニバーサル・グループのショーケースでのパフォーマンスなど、これこそが堂々の世界デビューといった売り出し規模。同じアジア人グループの本格的なワールドクラスの売り出しを目撃することができた。一方、日本では、IZ’ONE、PRODUCE101ら日韓プロジェクトが大きな盛り上がりを見せた。音楽だけでなく、ファッションや美容、食、様々な若者カルチャーのトレンドは韓国発信が多い。この勢いは当分続きそうだ。

★日本のネット音楽の先駆け、ニコ動出身アーティストの躍進

まふまふ、すとぷりといった、一般には知られてないニコ動系、キャス主、YouTuberの音楽アーティストがドーム公演を行った。2020年3月のまふまふの東京ドーム公演は一般に、このシーンの存在を認知させるだろう。 プラットフォームとしては退潮したと言われる「ニコ動」だが、いわゆるメジャー音楽業界とは別で、ネット系音楽シーンが独自の成長を遂げていた。

かつて、ニコニコ動画ではネット上でクリエイターが繋がり、ボカロP、歌い手、絵師、動画師など、コラボを行い膨大な作品を世に生み出した。また、既存のシステムでは対応しきれない互いの利益や権利についてのルールもクレジット表記などの独自のマナーを開発し処理した。これらは技術や制度が追いつかず、あくまでも表記に留まったが、今後ブロックチェーン技術などにより、この仕組みに似たものが金銭を伴った形で実現していくのではないか。そんな時代に、日本独自の「デジタル・ネイティブ」、「ネット音楽ネイティブ」のアーティストたちが大活躍するだろう。

初音ミクはなぜ世界を変えたのか?

初音ミクはなぜ世界を変えたのか?

 

コラボにおけるオンラインでの金銭分配については、Tunecore Japanによる、こちらのツールにも注目したい。

www.tunecore.co.jp

★世界の主流「ラップ」が日本で見せた意外な展開

世界の音楽のメインストリームであるHIP HOP/ラップ。日本においても一時の下火菜時期から「フリースタイルダンジョン」以後、若い層に支持が広がっている。約10年以上にわたるK-POPブームでもラップに慣れ親しんでるだろう。そんな中ブレイクを果したのがアニメキャラクターにラップさせる「ヒプノシスマイク」。ラップの魅力がアニメ女子にも浸透している。世界の音楽シーンから隔離されガラパゴスと呼ばれる中、予想もつかない流行りが生れる日本独特の音楽シーンの面目躍如だ。海外、特にアメリカでヒップホップ/ラップが絶大な人気を得ている背景に、ミックステープ、YouTube、サブスクなどのネットツールによって、フレッシュな新人があっと言う間に口コミでバズる環境が整っている。日本においては、ネット上での口コミやバズが起こる環境が整っているジャンルはアニメだ。日本のラップがイケてないわけではないし、日本のリスナーがラップを求めていないわけではないので、海外に比べて日本でのラップ人気が弱いのは、口コミやバズを生むネット環境が不十分だったという事が明らかになった。

hypnosismic.co.jp

★リスニング体験も進化する Amazon Music HD&Echo studio

サブスクの次の進化の段階はポッドキャストトーク)、そして高音質だろう。9月にスタートしたAmazon Music HDは、ハイレゾ音源とCD並みの音源が月額で聴ける。CDをさらに不要なものへと押しやるサービスの登場である。しかし衝撃はそれだけではなかった。立体音響(Dolby Atomos他)にも対応したEcho Studioという2万円ほどのスマートスピーカー(アレクサ)を発売し、サブスクとハードの両軸で、立体音響での音楽リスニング、Dolby Atomos対応の映画を自宅で楽しめるホームエンタメ鑑賞を一歩も二歩も押し進める。また、スピーカーというハードを売り、送料無料や映画、音楽のセットで課金する、バンドル形式を仕掛け、今後の流れをリードしている。
このバンドルプラン、AppleGoogleも行うのだろうか。音楽、映画は業界も違い、ビジネスも違う流れだったが、その壁が今取り除かれようとしている。
さまざまなサービス普及により、高音質化や立体音響のような「音」の進化が一般に普及することを期待したい。

wakita.hateblo.jp

★最後に:2020年は?

今まで支払っていたものが無料で入手できるカタルシスを感じる無料ブームも行きつき、ユーザーも音楽制作にはお金がかかることを認識しはじめている。かつてはエンタメ人の哲学として「お客様は神様」であり、お客側からもアーティストは崇拝対象で憧れだったが、今やアーティストも業界人も同じフィールドでフラットに日々起こる体験を共有する時代。私達プロはスキルや知識に自信をもって、その良い面を伝えていかなければならない。サブスクを中心に、YouTubeTikTok、様々なSNSや既存メディアでバズる楽曲や発信とはどんなコンテンツか。お金を払わせるのではなく、お金を払いたくなるような作品。
イントロの短い曲?コラボ?チャレンジ?名作の再現?共感?ダイバーシティ
才能を見い出しサポートし、共に日々努力、切磋琢磨し、考え、世に問う事で進化した音楽と音楽ビジネスを作り上げたい。

2020年もどうぞよろしくお願いします。

脇田敬

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音楽ビジネスの10年代を振り返る「スマホ、SNS、サブスク」の時代

あと数日で2019年が終わる。
と同時に2010年代が終わる。
ITやインターネットで激変した20年の表と共に、

この10年について振り返りたいと思う。f:id:wakitatakashi:20191230125557j:plain

 

★2010年代は「スマホSNS、サブスク」の時代。

iPhone4の発売は2010年6月。それまでのiPhoneや他のスマホに比べ、格段と使いやすくなり本格的なスマホ時代の到来となる。
YouTubeでは、2010年前後に記録的な再生回数を記録した曲たちは、2009年LADY GAGA「Bad Romance」、2010年Justin Bieber「Baby」、2011年LMFAOParty Rock Anthem」、2012年PSY「江南スタイル」。YouTubeが音楽を楽しむツールとして、不動の地位を築いた象徴的な曲たちだ。
サブスク時代を切り開いたSpotifyは2008年違法サイトへの対抗策としてスウェーデンで設立、ヨーロッパで普及した後、アメリカでのサービス開始は2011年。

また、Taylor SwiftやEd Sheeranなど2010年代前後にデビューし、YouTubeだけでなく、SNSのトレンドやSpotifyApple Musicといったサブスクの流れに上手く乗り、人気を拡大。現在の音楽シーンのトップに立っている。

Taylor Swiftは、デビュー時、Myspaceを初めて行ったカントリー歌手として話題を呼び、その後、リリースの度にYouTubeTwitterInstagram、そしてApple Musicなど、新しいツールでの話題を作り、時代を象徴するアーティストとしてトップに居続けた。2015年の『1989』ではApple Music独占先行配信、2017年『Reputation』では、発売前に全SNSの投稿を削除するなど、まさにSNSの申し子のようなアーティストだ。

Ed Sheeranは、UKで、グライムと呼ばれるUKのHIP HOPアーティストとのコラボで注目を浴び、国内で新人記録を打ち立てた2011年デビュー後、アメリカや世界では、TaylorやONE DIRECTIONなどとの共演で話題を作りながらSpotifyで曲を広めた。

男性ソロアーティストでアメリカでのセールスが歴代1位であるDrakeは無料ミックステープで人気を呼び、2010年にデビューし5作のアルバム、3作のミックステープをこの10年の間にリリースした。HIP HOPの新しいアーティストがメインストリームのトップに次々と現れる理由として、このミックステープという文化が大きな役割を果たしている。CDを販売することなく、グラミー賞を獲得したChance The Rapperの登場は、このミックステープの存在とサブスク時代の到来を大きく印象付けた。

※ミックステープについて書いた以下の記事も参考にしてほしい。

wakita.hateblo.jp
こうして、2010年頃に躍進したTwitterFacebookInstagramYouTubeは、「電気、ガス、水道」のようなオンラインに不可欠なインフラとなった。SpotifyはそれらのSNSと連携がスムーズであり、またSpotifyそのものがSNS的な拡散性を持つことで、違法音源サイトに対して有効な選択肢とならなかったiTunesに変わり、音楽リスニングの中心となった。
そして、Appleが重い腰を上げ、2015年にApple Musicをスタートさせ、音楽ビジネスにおいてサブスク時代が一気に加速。
この頃より下降していた音楽ビジネスがサブスクを原動力に回復していくことになり、サブスク時代が決定的になった。1999年Napstar設立などからはじまる2000年代が「インターネット」の時代だとしたら、2010年代は「スマホSNS、サブスク」の時代だった。
そして、時代は次に向かっている。2018年ごろから人気となったショート動画投稿アプリTikTokは中国のIT企業バイトダンスのサービスだ。Spotifyスウェーデンの企業であることを上回るインパクトだ。2019年はTikTokから大ヒット曲が生れた。
TwitterFacebookInstagramにはない音楽と結び付いた機能、業界との連携も強い。音楽シーンを活性化するパートナーとなっていくことを期待したい。

 

★日本の2010年代
日本についても触れておきたい。2010年、デビューから4年目のAKB48が「River」で大ブレイクを果し、第一回選抜総選挙を実施、2010年に国民的アイドルの地位についた。2007年にサービス開始したニコニコ動画は全盛を極めた。2009年-2010年に米津玄師は「ハチ」名義で楽曲を投稿していた。ニコニコ動画がプラットフォームとして動画配信市場を牛耳るような展開は無かったが、ネット音楽における未来を先取りした文化を作り上げた。2001年にデビューしたEXILEは、2000年代後半”オカザイル”で、国民的アーティストの地位につき、2010年には弟分の三代目J-SOUL BROTHERSをデビューさせ、自らは「RISING SUN」(2011)を歌い、多数のグループを抱えるLDH帝国を築き上げていく。少女時代の日本デビューは2010年の「GENIE」、それ以前の人気K-POPアーティストの東方神起BOAは、日本で制作された曲を歌っていたが、少女時代は日本デビュー前から、韓国でのヒット曲がYouTubeで日本に伝わり、デビュー曲も訳詞でのデビューとなった。その後の日本でのK-POP人気の型が出来たと言える。

上記のようにAKB、LDH、韓国という3勢力は、この時期に急上昇している。
AKBグループを筆頭に、特典券商法でCDを延命させ、日本でのサブスク時代を遅らせてしまった戦犯のように言われることがあるが、これらの3勢力は、YouTubeもサブスクも早い段階で解禁している。
特典商法だけではない。日本の2010年代においても「スマホSNS、サブスク」は不可欠であったのである。

 

2020年代は?5Gによって激変する社会全体、音楽やエンタメ。
ブロックチェーンやAIは?

スマホSNS、からのサブスクの時代だった2010年代が終わり、また新しい10年が始まる。次の時代はどんな時代だろうか。
一番の注目は、5G通信(第5世代移動式通信)だ。
「高速」「大容量、低遅延」「多接続」の技術革新により、4Gの20倍~100倍のスピード、遅延がなくなることでリアルタイムの同期が可能に、さらに、多数の接続が同時に行える。これらの実現は、またダイナミックの社会の変化をもたらし、エンタメの分野の影響も大きいだろう。

また、ブロックチェーンにも注目したい。
ネット上での双方向なコラボレーションや収益分配がスムーズに実現すると言われている。

AI(人工知能)は、どのような影響を及ぼすだろうか。すでに様々な分野で活用され、スピーディーに多様な趣向に応えるサービスを支えていると聞く。

これらの新しい技術によって便利さや楽しさはどんどん増えるだろう。しかし同時に様々な問題ももたらすに違いない。

2000年代のネット、2010年代のスマホと音楽ビジネスは大きな影響を受けた。ネットへの取り組みが後手になり、違法ダウンロード、違法アプリ、チケット高額転売など、問題も多く発生し音楽業界の根幹を揺るがした。

違法でなければやってもいい。自分たちの地位や立場、利益を追求する事は問題ないという風潮。やったもの勝ちというIT業者の考え方。新しい時代の波に積極的に飛び込めなかった既存業界やミュージシャン、そしてファン。

約20年かけて、IT技術の急速な進化に社会は対応できる柔軟性やスピードを身に着けただろうか?

2020年代変化はさらに加速する。”音楽ファースト”の思想でテクノロジーを使いこなし更なる感動が生れる時代を創るために、全力で役立ちたいと思う。


次回の更新は「2019年を振り返る」です。
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