Amazon、Spotify、、全世界配信コンテンツ時代に必要なアイデンティティ

Amazon Primeで歴史ドラマ『MAGI 天正遣欧少年使節』を観た。


全10話、Amazonオリジナルドラマとして、180以上の国と地域に世界同時配信。
これは新しい!日本制作の時代劇でありながら新しい!と感じるのは、全世界の視聴者に向けて作られた作品だからだろう。

 

AmazonNetFlix、Hulu、、、そして音楽ではSpotify、、

 

今、私たちは、全世界にコンテンツ(作品)を発信する時代を生きている。
ターゲットは国内だけではない。
ITテクノロジー革命によって大きな変換期にある世界では、エンタテインメントに新しいアイデンティティを求めている。

 

人種、セクシャリティ、道徳、宇宙観、歴史観

 

音楽においては、アーティストという「人」がコンテンツでもある。
表面的な流行りや聞き心地の良さを楽しみながらも、リスナーは心の奥深くで、「人」が持つ、膨大な量の情報を受け取っている。

今という時代に、私達日本という島国に生きるミュージシャン、音楽関係者が、知っておくべき情報は沢山ある。

映像作品から学ぶ点は多い。


今回は、『MAGI 天正遣欧少年使節』をはじめ、いくつかの映画、本を紹介したいと思う。

 

【紹介する作品】

『MAGI 天正遣欧少年使節

『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』

『沈黙』

『君の名は』

ブラックパンサー

殿、利息でござる!

『シュメルー人類最古の文明』

『サピエンス全史 文明の構造と人間の幸福』

『ホモ・デウス テクノロジーとサピエンスの未来』

火の鳥

ブレードランナー 2049』
『Spaceman』デヴィッド・ボウイ(Space X、Falcon Heavy Test Flight)

 

www.magi-boys.com

 

www.amazon.co.jp

 

TBS(TBSビジョン)制作、Amazonオリジナル。


スポンサー企業なし。忖度なし。
Amazonと世界の視聴者が喜ぶかどうか。
資本とターゲットが変わると、作り方もこれだけ変わる!

 

なので日本の歴史ものでありながら、今の時代に世界の視聴者が興味関心を持つ要素が満載。

 

いわゆる時代劇や歴史ものは、電波は政府の認可制で、スポンサーである国内企業のイメージ、そしてターゲットはお茶の間視聴者。日本という枠の中での万人受けになってしまうのは必然。

あと、海外映画祭でウケるものが作られるのは、溝口、黒澤といった巨匠が切り開いた歴史ゆえの伝統だろう。

 

この『MAGI 天正遣欧少年使節』は、

・有名なサムライ登場(信長、秀吉、明智、、)

というお馴染みのモチーフは登場するものの、

 

キリスト教の教え、イエスの唱える「愛」とは?何か?それは、日本人の信じる神や仏と何が違うのか?

 

というテーマを軸に、


・人種差別、奴隷制、性、身分制

ルネサンス~宗教革命~イエズス会によるカトリック布教~戦国時代

キリスト教と茶道の接点(自分と向き合う)

 

さらに、自分の信念を貫いて生きるとはどういうことか?
という普遍的な、青春の悩みもテーマとなっている。


どれも、いままでの日本の歴史ものであまり扱われなかったテーマだ。

 

世界中の人が興味を持つ、同時代テーマが盛り込まれ、若い役者たちが演じる青春ストーリーでもあるこのドラマ。日本に関心がある人なら必ず楽しめるような共感ポイントが用意され、物語に入っていきやすい。

音楽を大友良英(『あまちゃん』『いだてん』等で広く知られる、元はフリージャズ・シーン出身の音楽家)が手掛け、16世紀の西洋と東洋の交差を音楽で表現している。

広い音楽背景を持つこの人だからこそ出来た音楽だと思う。こちらも要チェックだ。

 

 

 

Netflixオリジナル番組『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』

 

東洋的な伝統と西洋との出会いについては、Netflixオリジナル番組として2019年1月より全世界配信され話題となっている、片付けコンサルタントの近藤まりえ(KonMari)の番組 『KonMari ~人生がときめく片づけの魔法~』にも見られる。

 

www.netflix.com

2010年に発売された『人生がときめく片づけの魔法』は、日本で100万部を超すベストセラー。世界中で発売され、累計1000万部以上売れているという。

なぜ、Netflixが番組化?という疑問も、この数字の裏付けで納得がいく。

www.youtube.com

KonMariの米国移住は、2014年。2015年には『TIME』誌の「最も影響力のある100人」artist部門に選出されている。2019年の大ブレイクは、10年がかりだと言える。

「片付け」をメソッド化し、日本でのヒットをステップに、世界進出を果たした興味深い事例だ。「ZEN(禅)」や「Jyujutu(柔術)」「KARATE(空手)」のように世界に広がるメソッドとなるか?

 

 

 

遠藤周作原作、マーティンスコセッシ作品『沈黙』

 

www.youtube.com

『MAGI』より後の時代、戦国期のキリシタン弾圧をテーマにした世界的に知られる遠藤周作の小説を原作を映画化した『沈黙』。

監督は数々の名作を持つ巨匠マーティン・スコセッシ

ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』やローリング・ストーンズの『シャイン・ア・ライト』などロック・ドキュメンタリーの名作でも知られるスコセッシが日本びいきでキリスト教をテーマにすることは偶然ではない。

信念を貫いて生きる事とは何かを考える時に、「日本」というテーマに意味を感じるのだろう。劇中、キリスト教棄教を迫る代官が「ちょっとした形だけでいいから、転べ(信念を捨てろ)」という場面は、とても日本的だ。

拷問に次ぐ、拷問、、目をそむけたくなる場面の連続は、嫌でも人間の本質に向き合わさせられる。個人的には、「3大いじめられ映画」(観ている間いじめられている気分になる映画)、あとの2つは『ダークナイト』『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』、、

 

 

 日本映画史上最大級の大ヒット・アニメ『君の名は』

 

www.youtube.com

ご存知大ヒットアニメ作品。日本での歴代興行収入ランキングで『千と千尋の神隠し』、『タイタニック』、『アナと雪の女王』に次ぐ第4位(日本映画では第2位)。世界での日本映画の歴代1位(2位は『千と千尋の神隠し』。

日本のアニメ作品は、海外で受け入れられるブランドがあり、制作段階でも国内、海外両方を意識していると思う。

SF的なスペクタクル、若い男女のラブストーリーというエンタメ要素をしっかり押さえた上で、日本の古神道の要素がしっかり重要なファクターとなっている。主人公二人がメトロポリタン都市TOKYOと田舎で入れ替わり、スマホを使ってやり取りする等、東洋の神秘と西洋文明、都市と山村という対比が「日本」をキーワードとした関心を引くだろう。

 

西洋文明とアフリカ伝統をSF化した画期的な作品『ブラックパンサー

 

日本は題材になっていないが、こちらも伝統と未来におてのアイデンティティが重要なテーマとなった作品。

『アヴェンジャーズ』シリーズの一作であり、マーヴェルにアカデミー賞(衣装、美術、音楽)3部門をもたらした。ヒーローSFでありながら、アフリカの架空の途上国ワカンダが実は世界最先端のテクノロジー国という設定、監督、主要キャストが全て黒人(の美男美女)という、王道ヒーローでありながら、斬新さ。

この観た事がない世界観を作り上げるのに、音楽も重要な役割を果たしている。

ルドウィグ・ゴランソンが手掛けた、アフリカ伝統音楽と劇伴、エレクトロニックをミックした劇中音楽はアカデミー、グラミー両賞を受賞、ケンドリック・ラマーが手掛けたラップ曲も映像表現としっかりリンクしている。

www.youtube.com

  

 

驚きの実話 『殿、利息でござる!

 


映画『殿、利息でござる!』予告編

tono-gozaru.jp

 

こちらは海外を意識した作品ではないが、日本人アイデンティティを考える上で重要な作品。

日本の歴史ものに現れる登場人物は、常に天皇や将軍、貴族や武士のような上流階級。たまに芸能民や宗教家が出てくるぐらい。この話の主人公たちは現代に暮らす私達に繋がる普通の人たち。(実際、今も子孫の方は、商店を営んでる)

江戸時代の伊達藩を舞台に、村の貧しい人たちを救う為に、やや金持ちの農家や庄屋たちが集まり、財政難の藩に金を貸して利子を稼ぎ、分配しようとする実話。

誰を攻撃するわけでもなく、人への愛と絶対屈しない心を貫いた「ヒーロー」です。

こんな人が親の親のその先の先祖にいたと思えることはどれほど素晴らしい事でしょう。世界に誇る社会の発展もいいですが、私はこういった人々を誇りたいです。

原作はこちら。 

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

 

 『殿、』の主人公、穀田屋十三郎他、中根東里、大田垣蓮月の3人について書かれており、いずれも心を打つ内容。

音楽、映画の世界では、聖書やギリシャ神話からモチーフを得るのは普通ですが、日本人としての引き出しもしっかり持っておきたいところです。

 

 

問われる、人間としてのアイデンティティ

 

『シュメルー人類最古の文明』

さて、IT技術が猛烈に進化し、AI、バイオ、宇宙など、次元レベルで人類の視野が広がっている時代。

国籍、民族アイデンティティだけでは追い付かない感もあります。
逆に、そういう時代こそ伝統やルーツから学ぶ事の意味があるとも言えます。

 

テクノロジー、つまり技術のルーツはどの時代のどの社会なんでしょう?
以下は今に繋がる人類文明のルーツである「シュメル文明」について書かれた本です。

シュメル―人類最古の文明 (中公新書)

シュメル―人類最古の文明 (中公新書)

 

衣食住、社会の仕組み、宗教、、ありとあらゆる文明のひな型が多くみられます。
もちろん日本の文化も源流を辿ればここに辿り着きます。

日本という国は、滅ぼされたことがない国なので、古い習慣が多く残っている。
欧米人や中国人が日本に旅行に来て感じる「懐かしさ」は意外とシュメル時代からのルーツが共通しているからかもしれない。それは、私達日本人が、沖縄の唄に魅かれたり、アフリカの旋律に民謡との共通点を感じるのに近い事でもある。

 

『サピエンス全史』『ホモ・デウス

『サピエンス全史』は、「人間」を万物の長として、当たり前の存在として見なさず、根本から問いかけます。あらゆる動物や、類人猿が滅ぶ中、地球環境にまで影響を及ぼす存在となった「ホモ・サピエンス」。その原因を、「想像力」に見るところが新しく面白い。

AI(人工知能)が登場し、もっと進化を遂げた時、頭脳、身体運動、はては音楽まで、自分たちより優れた能力を持つ存在を目の当たりにして、人としてのアイデンティティをどこに求めるのだろうか。

 

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福

 

 同じ著者の『ホモ・デウス』は、この歴史観の先に見える現在、未来を考察しています。

 

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来

ホモ・デウス 上下合本版 テクノロジーとサピエンスの未来

 

 

このような書籍は、映画や音楽にも影響を与えてる事が伺えます。人工知能とバイオテクノロジーとITが高度に結びついた時、「人間」のアイデンティティさえ危機を迎えます。

 


ブレードランナー 2049


ブレードランナー 2049』には、『ホモ・デウス』に近い発想のシーンや設定が見られます。人口知能、バイオテクノロジーによって生み出された「レプリカント」と人類の対立が描かれる伝説のSF映画の続編。前作の舞台は2019年だ。


映画『ブレードランナー 2049』予告3

 もとの『ブレードランナー』は、原作小説アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1977年)に、人間と対立する人工生命が、人間のような心を持つような、つまり人類の文明が神の領域、自然にまで届く未来を創造した作品。

 

 『火の鳥
漫画界の神、亡き手塚治虫のライフワーク。
永遠の命を持つ「火の鳥」を巡って、過去と未来を行き来し、紡がれる物語。
日本、人類、、宇宙、、宇宙時代、AI、バイオ、、天才の想像力と創造力は果てしない。。

火の鳥【全12巻セット】

火の鳥【全12巻セット】

 

hinotori.asahi.com

 

今月より、作者による幻の原稿から、櫻庭一樹によって新たに生み出された小説連載も開始。この時代に「火の鳥」をどうやって作り出すか。ワクワクします。

 

 

最後に、、

 

アーティストが生み出す「未来のアイデンティティ


昨年、RADWIMPSが「HINOMARU」という曲を発表し炎上や論争が起こった。
その時、ミュージシャンや音楽にとっての「ナショナリティ」つまり、「国」に関するテーマについて、まとめた文章を書きたいと思ってきました。

日本人として「誇り」を表現するのに、戦いの勇ましさ以外にも、引き出しがあってもいいんじゃないかと。
『君の名は』により、世界中に曲が届くアーティストとなった彼らは、世界を舞台に活動できるポテンシャルを持ったアーティストだ。一昔前なら、日本語で歌っている時点で海外では売れないと皆が考えていた。

しかし、今、世界中のチャートでスペイン語や韓国語の曲が多数ランクインしている。日本語の曲も、リズムに上手く乗せていく事で違和感なく受け入れられることは十分考えられる。日本のSpotifyでも、プレイリストで洋楽と並べて違和感のないJ-POP曲が求められる。

K-POPグループBTSのメンバーは『君の名は』の大ファンで、USのダンスポップに混ぜて、RADWIMPSの曲をプレイリストに入れた。

国内外を隔てない発信。これは必ずしもクオリティの問題ではない。言語でもないと思う。メンタリティやアイデンティティの要素が大きいのではないか?
日本人として「誇り」を表現するのに、戦いの勇ましさ以外にも、引き出しがあっていい。そんな事を考えて一番に思い浮かんだのが『殿、利息でござる!』でした。ぜひ、観てください。

もちろん、勇ましさも日本人の中にあるので、そういう歌があってもいいと思います。「HINOMARU」も政治的な理由で否定したくないです。アーティストが挑戦することは肯定したい。

 

 

 

さらに:未来を創るイマジネーションの力

 

そして、時代の変化の波は、遡るべきルーツや歴史を「日本」という2000年~1万年ぐらいの歴史を超えて、生物学的な「人間」としてのアイデンティティまで問いかけてきます。
人工知能」「宇宙」「生命(バイオ)」

これらのテクノロジーの進化が急激な今の時代、ローカルな歴史も大事ですが、地球規模での視点も大杼な事を痛感します。

下の動画は、Space X社の「Falcon Heavy」のテスト打ち上げの動画です。
デヴィッド・ボウイの1972年の曲「Starman」が2:45~使われています。(赤い車でマネキンのStarmanが火星へドライブするという、凄い企画)

 


Falcon Heavy Test Flight

 

デヴィッド・ボウイは、1969年にアポロ11号が月面に着陸した9日後に「Space Oddity」をリリース。71年「Life on mars?」72年「Spaceman」をリリース。それから約40年後の2018年に人類の火星移住を目指したロケットの打ち上げに曲が使用されているというドラマチックな展開。

アーティストや作品は、未来をイメージし、進化へのインスピレーションを与える。『サピエンス全史』で書かれた、人類が進化を遂げた最大の理由である「想像力」こそが、人間の最大の力かもしれない。音楽に関わる者として、想像力、創造力を大事にしていきたいです。


ちょっと話が飛躍しましたが、今後もっと飛躍していかないとと思います!

 

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ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!

ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!

 

 

サブスク時代の音楽の売り方②ファン行動について ~ファンダム、ファンクラブ~

前回、サブスク時代に無料ツールなどで、アーティストを上昇させる方法について書きました。今回はファンによるプロモーション活動、ファン行動について書きます。

 

wakita.hateblo.jp

 

3月17日にニューミドルマン・コミュニティのオフ会(勉強会・交流会)を行います。ファンクラブ事業のリードカンパニーSKIYAKIさんからお話を聞く形で、新しい時代のFCについて考えます。

イベントに向けてのメモ、または問題提起として、現代のファン行動について考えてみました。

nmm-meetup-201903.peatix.com

 

 ファンダム

「ファンダム」という言葉を聞いたことがあるだろうか?

201年代、SNSの普及と共に、アーティストとファンの距離はぐっと近くなった。
アーティストがTwitterInstagramを通じて情報発信し、ファンは熱く信奉する。

そして、勝手のファンが受け身の消費者であったのに対して、ファンダムは積極的に行動し、アーティストや事務所、レーベル、そして社会全体に対して直接意見を伝え、影響を与える存在だ。

「物を言うファン」と「ファンダム」の違いは、ネットワークし組織的な行動を取るか否かだろう。

 

 

かってのファンは、作品やパフォーマンスを受け取り、好むかどうかだった。

ファンクラブも、先行チケット購入、会報、が中心だった。
しかし、ファン行動がインタラクティブになり、一方的な受け手ではなくなったため、ファンクラブも変化を求められている。

SKIYAKI社は、ファン行動をポイント制とし、沢山応援してくれたファンが特典を受け取れたりする仕組みをスタートし、岡崎体育のファンクラブをこの仕組みで行い、大きな話題を集めた。このインタラクティブなファン行動を可視化し、マネタイズする動きの背景となる時代状況を考えていきたい。

 

okazakitaiiku.com

 

 

テイラー・スウィフト

テイラー・スウィフトはデビューの時、カントリー・アーティストとして初めてMyspaceアカウントを作り、発信した。その後、リリースの度に、YouTubeTwitterInstagramSNSプラットフォームでのアクションを行い、アルバムをヒットさせてきたアーティストだ。アルバム『1989』リリース時は、SpotifyApple Musicの競争が激化するタイミングでのApple Music先行配信で大きな話題を作ったのも記憶に新しい。

『1989』発売時は、日本で行われるような、Type-AやType-Bといったような、ジャケ違い、収録曲違いの商品を数種類作り、ダウンロードが主流の時代にCD目がセールスを達成した。
最新アルバムである『reputation』では、ファンダムやメディアからの要求に応える事の問題を吐露する衝撃的な内容を含むダークな内容で、当初鈍い売り上げからロングセラーを達成し、年間セールスでも1位となった。彼女が大胆なアクションを繰り出せるのは、ネット上に熱烈な信者の集団「ファンダム」を巧みにコントロールしてきたからだ。(音楽がいいのは前提)

SNS時代の音楽ビジネスを考える上で彼女の動きは見逃せない。

 


Taylor Swift - Look What You Made Me Do

 

レディーガガ

レディー・ガガは彼女のファンたちを「リトル・モンスター」と名付け、Little Monstersという双方向のファンサイトを作る事で、行動的なファン行動をアーティスト自ら後押しする為のコミュニティーを提唱した。LittleMonstersは成功しているように見えないが、この手法はK-POPジャンルで成功を収めているように思う。
また、アカデミー賞グラミー賞など受賞し、ガガを名実ともに2010年代を代表するアーティストにした主演映画『アリー/スター誕生』のライブシーンのオーディエンスはファンクラブで集められたそうだ。コーチェラ・フェスティバルやLAフォーラムなど様々なライブ会場でのシーンがかってないほどリアリティがあるのは、オーディエンスがエキストラではなく、本物のファンだからである。


Lady Gaga - Always Remember Us This Way (From A Star Is Born Soundtrack)

 

ボーイバンド~アメリカン・ティーンスター 

遡れば、90年代後半、バックストリート・ボーイズやインシンクといった「ボーイ・バンド」と言われる男性ヴォーカルグループの隆盛、そして、ブリトニー・スピアーズの登場によって、熱狂的な人気を得る女性ソロシンガーのスーパースターの流れが確立していったように思う。

ちなみに、この流れを代表する楽曲である、バックストリート・ボーイズの「I Wnat it that way」とブリトニー・スピアーズ「Baby one more time」は、2000年代最大のヒットメイカー、スウェーデン人のマックス・マーティンの出世作でもある。スウェーデンの作曲家が、ヒップホップやエレクトロ・ミュージックを自由に加工し、ヒットポップスを作る流れも、この時期に始まっていったのです。

PC、DAWの普及でそれ以前より遥かに安価で作曲やレコーディングが出来る、打ち込み音楽ヒップホップやダンスミュージック・ベースのポップソングに合わせて歌い踊るスターは2000年代のポップミュージックのメインストリームと言える。

 

 

 

BTS

BTS防弾少年団)の活躍は、昨年、日本でも大きな話題となった。彼らは、このボーイバンドの最新型であり、「ARMY」と呼ばれる彼らのファンたちは、「ファンダム」の象徴的な存在です。時に社会的なメッセージも含んだ歌詞と「ARMY=軍」というコンセプトは、革命や社会運動をイメージさせ、欧米人にも響くものがあったのだろう。


BTS (방탄소년단) 'IDOL' Official MV

 

 

日本~AKB48、ジャニーズ~ランキングとの関係

AKB48が、「RIVER」あたりで大ブレイクを果した後、選抜総選挙をスタートさせ、ファンの力がグループのメインヴォーカルである「センター」が決まるという仕組みを成立させ、圧倒的な人気を作り上げた。結果、AKB48は、10年にわたって、オリコンシングルチャート年間トップを独占し続ける無敵の存在となった。時に批判されながらも「国民的グループ」の称号を維持しているのは、このオリコン・チャートでの実績に裏付けられている。

 

一方、同じくオリコンチャートを独占する勢力であるジャニーズ事務所の動きはどうだろうか。大規模な握手会などは行わず、音源、コンサート、ファンクラブ、などバランスよく旧来の音楽ビジネスを展開していると言える。しかし、ファンダムの波はここにも及んでいる。活動休止したSMAPのファンは、グループ存続などを求めて、SNSで呼びかけシングル「世界に一つだけの花」のセールスを伸ばしたり、ランキングに登場させたりする消費行動を行った。ファン有志で新聞広告も打ったりもしている。

 

CDセールスを元にしたオリコンチャートが人気の指標となっていた時代に変化が現れたのが昨年。ダウンロード、ストリーミングが集計に加わっているだけでなく、TwitterYouTube、CDのPCへのリッピングも集計されている。

www.billboard-japan.com

 

昨年の年間ランキングを見ると、安室奈美恵や米津玄師やDA PUMPが上位にランクし、ヒットの指標として納得できる内容になっている。

しかし、このビルボードランキングにも、ファンダムの影響はしっかり見られる。BTSが年間アーティストランキングの3位に入っているのはもちろんだ。

ストリーミングどころかダウンロードやYouTubeアップすら行わないジャニーズ勢は、嵐の15位が最高位。

しかし、気になるのは18位に入っているNEWSだ。シングルセールスで年間16位、リッピングで20位、注目すべきはTwitterBTSに次ぐ2位を記録している事だ。

NEWSファンは、SNSでネットワークして、NEWSを応援するファンダム化した動きを取っている事が読み取れる。メンバーの脱退などを乗り越えて活動し続けるNEWSというグループの歴史が、ファンの組織化の推進力になっているのかもしれない。。

 

このような動きは、Billbordランキング、Twitter、そしてSpotifyチャートで威力を発揮しているように思う。YouTubeは、意図的に再生回数を増やすことに制限をかけている。

 ファンダム的な「行動するファン」「ネットワーク化」は、SNS時代が背景になっている。BTSに代表されるK-POPグループは、ファンクラブをこの「ファンダム」の需要に応える場として成立させている。日本の「AKB総選挙」という世紀の大発明も、何がしか影響与えているのかもしれない。

寄付を払って党員になり、政治的な方針を社会に広める政治活動のように、応援したいスターや共感できるアーティストのメッセージやコンセプト、魅力を広め、仲間と繋がりネットワークして勢力拡大する。

この楽しみ方は、一過性ではない気がする。

 

SHOWROOM

著作もヒットし、AKB48はじめ秋元康プロデュースユニットは多かれ少なかれ活用するライブ配信アプリ「SHOWROOM」は、総選挙をオンライン化したようなツールだ。ファン行動をゲーム感覚でスマホサイズで仕組み化を実現し、多くの利用者を獲得するとともに、配信者へ収益をもたらし、音楽業界の最大の問題である新人アーティストのマネタイズに一つの答えを提供している。
ジャニーズもヴァーチャル配信をスタートさせた。

www.showroom-live.com

 

クラウドファンディング

ファン行動の中でも「応援」という点で、ファンが直接お金を出すというのはわかりやすい。ここに、善い行い、競争、意味など物語を加えることで、エンタメにおけるクラウドファンディングは成立するように思う。Makuakeにおける成功例、アニメ『この世界の片隅に』などは、商業的に成立しにくいテーマである「戦争」「原爆」を扱った作品を実現するという、社会性があったこと等

 

www.makuake.com

 

 オリコンランキングの改革により、握手会目当てのCD大量購入によるランキング・ブランディング時代が終わるかもしれない2019年、ファン行動は次のステージへと向かっている。今後に注目したい。

あと、2000年代辺りのメロコアラウドロックのジャンルにおける「ストリート・チーム」というファンによるプロモーションについても、また掘り下げて、今後を考える材料にしたいなと思います。

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最後に

このファン行動とチャートランキングについて考えていて、思い出した本がある。ジャズミュージシャン、サックス・プレイヤーで著述家の菊地成孔さんの、「CDは株券ではない」だ。

CDは株券ではない

CDは株券ではない

 

 

 J-POPが、CDビジネスで潤ってた時期の本だが、CDを株券の銘柄に見立てて、売上枚数を予測する連載企画をまとめた本。この本のコンセプトはSNS社会の到来によるファンダムの動きによって現実になってきているのではないだろうか。

こちらも興味のある方はチェックしてみてください。

 

ファン行動の現在未来に興味を持たれた方、ぜひイベントご参加ください。

ニューミドルマン・コミュニティの会員イベントですが、下のPeatixより申し込んで頂ければ参加できます。

nmm-meetup-201903.peatix.com

 

入会も受け付けております。

nmm.bitfan.id

 

脇田敬

https://twitter.com/wakiwakio

https://www.facebook.com/takashi.wakita

著書『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』

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3/8公開 クリント・イーストウッド主演・監督作『運び屋』

巨匠の最新作『運び屋』はライトに「善悪」を問いかける?そして、イーストウッド作品における音楽の役割

3/8より公開。クリント・イーストウッド主演・監督作『運び屋』。

88歳のイーストウッドが主演も行った最新作。

麻薬組織の凄腕運び屋が90歳のおじいちゃんだったという、『ニューヨーク・タイムズ』に載った実話を元に膨らませた話。

 

wwws.warnerbros.co.jp

 

この映画で使われてる曲と、音楽家でもあるイーストウッド映画楽曲を集めたSpotifyプレイリストを作成しましたので、ぜひお楽しみください。

 

Spotifyプレイリスト作りました

open.spotify.com

 

さて、同年代の老人を演じたこの作品。実際のイーストウッドはありえないぐらい元気なので、90歳の元気をほどほどにな老いた姿を名演しています。

とはいっても88歳。レジェンドであり、映画史に燦然と輝く巨匠の最後の作品か?という目で見られます。1人の老人の人生の集大成を描きながら、イーストウッド自身の人生も重なります。と書くと重そうですが、作品の印象はライトです。

 

善悪、モラルに問いかけるイーストウッド映画 

イーストウッド演じるカールは家族関係をないがしろにする反面、コミュニケーション力が高い人気者。とても魅力的なので、彼が行ってる事が社会に悪い影響を及ぼしているように感じられません。

マディソン郡の橋』では不倫を純愛として描き、太平洋戦争を描いた二部作『父親たちの星条旗』『硫黄島の手紙』では日米両軍の視点から、硫黄島の戦いを描きました。その他、『ミスティック・リバー』『グラン・トリノ』『パーフェクト・ワールド』など、善と悪の両面を問いかける作品が多数あります。

一筋縄ではいかない、正義やモラルについて問いかけます。

この『運び屋』でも、法を犯して大金を稼いだ金を惜しみなく善行に使うかと思えば、遊びにも使う老人が描かれますが、そこが魅力的に見えるところに、価値観を揺さぶられます。

 

重要な役割を果たす「音楽」

作中、ゆったりと流れる時間で、役者の名演を通じて、それぞれの人物の心情が深く心に沁み込んでくるのが、イーストウッド映画の魅力ですが、この中で音楽の果している役割はとても大きいと言えます。

自ら、ジャズに造詣が深く、カントリーなどの音楽にも通じるイーストウッドの映画は、90年代以降のアメリカン人の考え方にも少なからず影響を与えてると思います。日本で近い立場の人は宮崎駿監督でしょう。

彼自身が作曲する事も多いテーマ曲では、アコギやピアノの静かな旋律が、心の奥深くに染み込み、決して白黒つける事が出来ない善悪という重いテーマを、優しく包み込みます。

そして今年のアカデミー作品賞を獲った『グリーンブック』(イーストウッド映画ではない)でもそうでしたが、車での移動シーンは観ていて爽快感があります。また、独特の音楽センスはイーストウッド映画の肝。車の中で聴く古いアメリカのポップスや麻薬組織と関連してでてくるラテン音楽もこの作品の魅力の一つです。

 

 

 

 これらのアメリカ音楽たちが、また優しく、ノスタルジックで、軽快で。イーストウッド演じるカールのキャラクターを描き出しています。

また、麻薬カルテルのヒスパニック・マフィアたちも親しみやすく描かれています。トランプ政権で、メキシコ人に対して風当たりが強いと思うのですが、彼らも同じ人間であり、愛すべき存在だと思わせられる描き方に友愛の気持ちを感じました。そこでも音楽の力が作用していると思いました。

 

アルトゥーロ・サンドバル

この映画の音楽クレジットはアルトゥーロ・サンドバル(Artulo Sandoval)キューバ出身のジャズ・トランぺッター、ラテン・ジャズの第一人者、巨匠です。彼は、ジャズからマンボやキューバ音楽まで幅広く演奏し、映画音楽も多く手掛けます。

2018年には、『アルティメット・デュエット』という、スティーヴィー・ワンダーアリアナ・グランデファレル・ウィリアムズプラシド・ドミンゴなど豪華ゲストとの共演アルバムを発表しています。興味の沸いた方はこちらも聴いてみてください。

 

 

『運び屋』という名の、老人の話を観たいと思う人がどれほどいるのかわかりませんが、イーストウッド映画に外れ無し。ツッコミどころもありながらも、新しい目線、切り口が沢山あって、単純なヒューマンドラマで終わりません。

巨匠のクリエイティブな感性に勉強させてもらったような満足感を得られました。

是非、皆さんも観て頂き感想を語り合いたいです。

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アカデミー大本命『グリーンブック』観ました。

3月1日より公開の映画、アカデミー賞最有力候補の『グリーンブック』を試写で観てきました。 (ネタバレ無いと思います)

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【公式】『グリーンブック』3.1(金)公開/本予告


https://gaga.ne.jp/greenbook/

アカデミー最有力は沢山あるが、これが本命?チラシやHPも「最有力」→「大本命」に変わっており、関係者も賞レースに手ごたえを感じているようです。

実在のピアニストが題材となっている作品。今回もサントラや関連曲のプレイリストを作ってみましたので、Spotifyで聴いてみてください。

 

 

公民権法が成立する以前の1962年を舞台に、黒人ピアニストとイタリア系ドライバーが、人種差別の根強いアメリカ南部(Deep South)をツアーする話。

まず、インテリで裕福な黒人の天才ピアニストと貧しいブロンクス育ちのイタリア系白人という対比の設定がおもしろい。この対照的な二人のやり取りが微妙にズレているのが可笑しい。

二人は人種や立場が違っても、自分の生き方や仕事に真剣でプライドを持っているところがとても気持ちいいです。
オスカーも、主演、助演、監督、脚本、編集とノミネートされ、人間ドラマとして高く評価されているのがわかります。

 

音楽

ドラマが進む中で、良きタイミングで入ってくる演奏シーン。
ドン・シャーリーは黒人ミュージシャンなので、反射的にジャズやR&Bを想像してしまうが、流れてくる音がクラシカル。その演奏に喝采を贈るオール白人の聴衆。
この”ズレ”によって、観ている自分の固定観念を指摘され心を揺さぶられます。
理屈ではなく、音楽での指摘が、この映画のスパイスになっていると思います。

 

ドン・シャーリー Don Shirley
ストラヴィンスキーも絶賛したピアノ神童から「ジャズ・ピアノ・レジェンド」へ

 

さて、この話は実在の人物、実話を元にしており。1962年の南部ツアーは実際の出来事です。黒人ピアニスト、ドクター・ドン・シャーリー(Don Shirley)は、1950-60年代に多くの作品を発表したピアニスト。
2歳よりクラッシック・ピアノを習い、9歳でロシアのレニングラードに留学した「天才」。ストラヴィンスキーからも絶賛された神童だが、黒人ピアニストがクラッシックの世界で商業的に成功するのは難しく、カテゴリーとしてはジャズ・ピアニストとして活動したようです。
楽曲を聴くと、ジャズにクラッシックを折衷したイージーリスニングのようなインスト・ポップで成功を収めたようです。
ドン・シャーリーの最大のヒット曲が1955年の「Water Boy」。

ジャズ、クラッシック、映画音楽を折衷した音楽がこの時代のアメリカのメインストリームのポップミュージックだったのでしょう。
彼の客層は、ラジオで流れるリズム&ブルーズ、ロックンロールと違う、家のリビングでステレオで音楽を聴くような白人富裕層だったのでしょう。

ボブ・ディランのブレイク、ビートルズアメリカ上陸は1964年。


クリス・パワーズ
ジャズ界の新星は映画スコア、ヒップホップとボーダレスな活躍


今作では、劇伴スコアとDon Shirleyのライブシーンの演奏をクリス・バワーズ(Kris Bowers)という、ジャズ/クラッシック/映画音楽をクロスオーバーするピアニストが担当しています。まさに適任の彼は、他にも劇中のピアノシーンの手元を演じ、ドン・シャーリー役のマハーシャラ・アリのピアノ指導も担当。まさに全面的にこの作品に携わっています。

2014年のアルバム『ヒーローズ+ミスフィッツ』より「Forget-er」

ジャズ界最大のコンテストであるセロニアス・モンクコンペティションで優勝。

ヒップホップ世代のジャズ・ピアニストとしてカニエ・ウェストとジェイ-Zのアルバムにも参加している。 

https://www.universal-music.co.jp/kris-bowers/


ロバート・プラントも協力?
映画を彩る50-60年代のリズム&ブルーズ

ドライバーのトニー・リップが運転しながらラジオで聴く音楽は、リトル・リチャードやチャビー・チェッカーアレサ・フランクリンなどの”黒人音楽”。
これらの音楽をかけながら、美しい自然風景の中を、ターコイズ色のキャディラックでバーチャル・ドライブするのもこの映画の魅力の一つ。

この50-60年代の音楽の選曲には、元レッド・ツェッペリンのヴォーカリストロバート・プラントも協力したそうだ。
監督の妻と、プラントの彼女が友人で、一緒に食事した際に「50年代後半から60年代前半で、今は聴かれなくなっているカッコいい曲を教えてほしい」と依頼。プラントのアメリカ音楽の知識から、YouTubeを再生しながらピックアップした曲が、この映画のサントラの元になっているそうだ。素敵な話。

 

最後に

 個人的に、ドン・シャーリーにとても興味を惹かれました。
ジャマイカン系の黒人天才少年、8か国語を話し、心理学の博士号を持つ。9歳でロシア(ソ連)のレニングラード留学、ストラヴィンスキーに絶賛されたという経歴。
20世紀を代表する作曲家の一人であるストラヴィンスキーはロシア人、パリでバレエ音楽で成功し全世界で活躍した。彼がディアギレフやニジンスキーと作り上げたバレエ作品は常識や偏見を超えたものでした。
そんな彼がNYで、ドン・シャーリーと出会って何を感じたか。。

 

そして、もう一つ、運転手のトニー・リップは、イタリア系。
この年代のイタリア系の音楽と言えば、フランキー・ヴァリ&フォーシーズンズ。


映画『ジャージー・ボーイズ』予告編(ロングバージョン)【HD】 2014年9月27日公開

トニーがラジオのリズム&ブルーズを語る場面、頭の中で当時の時代の音楽について考えました。フォー・シーズンズブルース・スプリングスティーンビリー・ジョエルのような音楽がここから生まれていくように思って胸が熱くなりました。


もう一度プレイリスト貼っておきます。フォローしてみてください!

「CD売れない」記事に思う、サブスク時代の音楽の売り方

少し前にあったこの記事に驚いた。
CDが売れなくなってる事に、、ではなく「CD売れない」記事が今だに注目される事に、だ。

forbesjapan.com

アメリカの音楽シーンはサブスクリプション(定額制ストリーミング)が既に主流となっているので、ニューカマー・アーティスト、しかもダンスミュージック系のCD売り上げ数が低いのは驚く事ではない。

それよりもこの記事の大事な点は、デビュー2年の新人であるラッパーが、どこから現れ、どうやってヒットチャートの頂点まで上がって来たのか、だと思う。

 

 

売れるものには理由がある。そこには仕組みがある。

サブスク時代に才能ある新人が「ブレイク」「ヒット」を達成するには、しっかり機能した無料音源のシーンでスマッシュヒットを飛ばし、「有料」の入り口であるサブスクへ(特にSpotify)ステージを移し、Viralチャートで上位に食い込んだり、プレイリストに入る事で表舞台の音楽シーンにエントリーする。

そこで広く知られることにより、やっと本当の意味でのビジネスがスタート。音源商品(CDやダウンロード)、ライブ、グッズ、ファンクラブといった4つの商材を販売するビジネスが可能となる

ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!

ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!

 

 

 

 

 

ヒットの指標となっているサブスクリプション(定額制サービス)

SpotifyApple Musicに代表されるサブスクリプション(月額制サービス)を中心に回っている。その中でメインストリームであるHIP HOP系を支えるのは、ネット上にアップロードされたたフリー音源「ミックステープ(Mix-Tape)」の存在だ。このミックステープ・シーンでの評判からスターが次々と生まれている。

その名の通り、昔はDJミックスしたカセットテープだが、今では、クオリティもオリジナルアルバム並みに進化、商業目的ではないギリギリの線で色んなルールからも自由な創作を行い、登竜門として機能し、サブスクリプションの普及後は相乗効果を生み、チャンス・ザ・ラッパーのグラミー受賞などに代表されるビッグヒットや大ブレイクアーティストを多数生み出し、現在のヒップホップ系の隆盛を生み出している。


ドレイクやケンドリック・ラマー、チャンス・ザ・ラッパーのようなスーパースターは、このミックステープをきっかけに人気を得て、サブスクリプションでの記録的な再生数でその地位を確固としたものにしているのだ。

今の音楽シーンを理解するカギとなる「ミックステープ」について詳しく知りたい方は、以下の本で

ミックステープ文化論

ミックステープ文化論

 

  

無名からトップへ~整備された道
ミックステープ→批評サイト→デビュー→ヒット

この全米NO.1アルバムアーティスト、 Boogie Wit Da Hoodieもその一人である。

NYを中心に活動するラッパーである彼は2016年にオンライン上にミックス・テープ『Artist』をアップし、メディアやリスナーの評価を得た事で、その名を広め、アトランティックレーベルとメジャーディールを結んだ。

『Artist』はオフィシャルYouTubeにて聴くことが出来る。
普通に販売していておかしくないような内容だが、これを正規リリースするより、ミックステープシーンに無料でばらまく方が、キャリアアップに繋がる状況が出来ており、結果、彼もそのルートに乗って、メジャーディールを獲得している。

www.youtube.com

 

 結果、2017年にデビューアルバム『The Bigger Artist』とリード曲「Drowing」はネット・シーンでの盛り上がりの波に乗りヒット、チャート上位に登場し、更には今回の作品『Hoodie SZN』での全米1位へと順調にキャリアを進めた。

 

 


A Boogie Wit Da Hoodie - Drowning (WATER) [Official Music Video]

 

ミックステープや、YouTube動画にアップした音源がネット、スマホSNS世代の口コミやバズとなり、批評もしっかり機能し、クオリティの向上を支え、その盛り上がりが、そのままサブスクリプション(特にSpotify)のランキングに反映され、さらに広がる。

このエコシステム(生態系)が確立していることが、今のヒップホップの隆盛を支えている。

 

日本では?

このミックステープ(Mix-Tape)という文化は日本にはない。
日本でそれに近いものというと、インディーアーティストがYouTubeやSound Cloudにオリジナル音源をアップし、ライブ会場でCD-Rなどを手売りで販売するのに近い感覚だろう。
同人と呼ばれるシーンやかってのニコニコ動画などは、無名のミュージシャンが知られる仕組みが出来ているが、そこから上に上がっていき、「ヒット」や「ブレイク」を果すというよりは、趣味や、ビジネスから線を引いた自由な創作を重んじる傾向が強く、メジャーシーンとの連動がうまくいってないと思える。

「eggs」や「nana」といったサイトも近い役割かもしれないが、こういったネット上の音源は、まだまだアーティストが上に上がるチャンスを担っていない。もっといえば、サブスクの普及もまだまだ。

 

日本において、新しいアーティストが登場しブレイクする手段として成立している例


・フェス系バンド・・・

ライブハウス・シーンで頭角を現す→TwitterYouTubeを補助に使いインディ・リリース→フェス出演やメジャーデビューで広まる。

 

・地下アイドル系・・・

ライブハウス・イベント→口コミ、批評が盛ん→アイドル・フェス、メジャーデビュー

 

・同人系クリエイター・・・

同人系イベント→SoundcloudYouTubetwitter→アニソンの制作

 

上の3つのように、口コミが発生する場やシーンが出来ているジャンルは、新しい才能が育ち、知られる道筋が出来ているので、他に比べれば、新しいアーティストが浮上することは可能だ。しかし、それでも茨の道である。

オンライン上にシーンを生み出さない限り、サブスク時代のスピードにはついていけない。もはやCDプレイヤーが部屋に無い時代、PCすら持ってない人が増えている時代であることを考えるとどうにかならないかと悲観的になる。

もっと絶望的なのは、シーンや場、ツールが無く、高いクオリティが前提となっているシンガーソングライターやポップス系シンガー/ユニットだ。
昔ながらの事務所やレコード会社所属に頼るしか道はない状況はとても厳しい。

「日本ダメ」みたいに言ってるように聞こえるかもしれないが、日本にも優れたシステムがある。

ニコニコ動画は、世界の最先端を行っていたムーブメントだ。画期的なボーカロイドソフトと動画サイトが合体し、トラックメイカー、作曲家(ボカロP)、シンガー(歌い手)、絵師(イラスト)、動画師(映像編集)など、様々なクリエイターとユーザーのエネルギーが交わって爆発的な盛り上がった、世界の未来を予言したような革命的な最先端のカルチャーだった。

詳しくは「ヒットの崩壊」なども書かれている柴那典さんの名著で↓

初音ミクはなぜ世界を変えたのか?

初音ミクはなぜ世界を変えたのか?

 

  

トップアーティストが上がってきた道


さて、最後に、このミックステープで注目を集め、実際にトップに上り詰めたアーティストThe Weekndの軌跡を紹介したい。

昨年末、初の来日公演を行い、ワンアンドオンリーの「声」の力、陰のある曲調が結び付いた楽曲を少ないMCで歌い続けるライブスタイルでオーディエンスを魅了した。こんな素晴らしいアーティストが、ガンガン出てくる音楽シーンにしたいものです。

 

ちなみにゲストアクトは 米津玄師。2018年日本で一番売れたアーティストである彼は、ニコニコ動画ファーストブレイク→ユニークなバンドスタイルでポジションを築く→ソニーに移籍、ドラマ主題歌を手掛けるようなポップスを生み、遂にはお茶の間の頂点に存在するアーティストになった。


米津玄師 MV「Lemon」

 下から、草の根からトップへ上がるという意味で共通する道を歩んできたアーティストの共演という意味で興味深いライブでした。

 

The Weeknd

2015年全世界で大ヒットを飛ばし、トップアーティストの地位を固めた、シンガー&クリエイターThe Weekndことエイベル・テスファイは、1990年2月生まれ、エチオピア人系カナダ人。インターネット/ミックステープからメインストリームへと進出。

2010年末に、The Weeknd名義でYOUTUBEに3曲のデモ音源をアップ。同郷のドレイクの関係者がその存在をブログで取り上げたことで口コミが広がる。

2011年3月に最初のミックステープ『House Of Balloons』をフリーでリリース。一躍脚光を浴びる。ファンにより多数の非公式ミュージックビデオが作られるほどの人気と話題性を得、本作は累計で800万回のダウンロードを記録。

同年7月には地元トロントで初のライブ。各メディアの年間トップアルバムに選ばれる。

2012年リパブリック・レコードとメジャー契約。フリーで発表したミックステープ3作をまとめ、ボーナス・トラックを追加した3枚組アルバム『Trilogy』をリリース。全米ビルボード・チャートで4位に初登場、全世界で累計100万枚を超えるセールスを記録。

 

 2013年9月10日メジャーデビュー後初めて制作したアルバム『Kiss Land』で全米2位を記録。

2014年にアリアナ・グランデの「Love Me Harder」にフィーチャリング&作曲、2015年世界中で大ヒットした映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』に「Earned It」が起用されては一気にファン層を拡大した。


Ariana Grande, The Weeknd - Love Me Harder

 


Earned It (Fifty Shades Of Grey) (From The "Fifty Shades Of Grey" Soundtrack) (Explicit...


6月「Can’t Feel My Face」は全米No.1に。

ダークR&Bのテイストを残したまま、よりポップフィールドに適応させ国境を超える大ヒットアーティストへと登りつめた。


The Weeknd - Can't Feel My Face

 


The Weeknd - I Feel It Coming ft. Daft Punk

 

最後に、、
「無料」と「有料」を使いこなすのが今の音楽ビジネス

CDが売れない事が問題なのではなく、ネット/SNS時代に、いい音楽、いいアーティストがどんどん世に出ていかないことが問題。
意識を持ったアーティストやスタッフの方はサブスク時代をどう攻略すればいいのかについて関心を持たれていますが、この記事で書きましたアメリカの状況など参考にすると、無料音源をうまくネット上に展開する事が鍵だと思います。

EDMシーンのクリエイターを世に出したのも、若いアーティストが上がっていく手段となったBeatportのようなサイトだと思いますので。
ちなみにZeddもこのサイトのオーディション出身。。
詳しくは、また別の機会に。

www.beatport.com

 

この問題について一緒に考えたいという方は、ぜひ、ご連絡ください!

西野カナ活動休止から思う「メジャー」とは何か?

昨日発表され、大きな話題となった西野カナの「無期限活動休止」の発表。
10年間、毎年アルバムを出して、ツアーをして、そりゃ、そろそろ休ませてあげないと、と誰もが思うでしょう。

www.nishinokana.com



同じくソニー・グループの2010年代を支え続けてきたアーティストとして、いきものがかりがいる。2006年のデビューより、(おそらく)全てのシングルがタイアップ曲。2017年年初に活動休止(放牧)し、2018年末の紅白歌合戦で復帰、年初に配信シングルをリリースした。

この時期は、乃木坂46が大ブレイクを果し、それに続く欅坂46など「坂道」系と呼ばれる、アイドルグループが大きな売り上げ、利益を上げたことも無関係ではないだろう。

いきものがかりの休止については、グループなので、もしかして解散や分裂などの不安を思い浮かべたファンも多いだろう。しかし、ソロアーティストの西野カナの場合、あえて「無期限活動休止」と発表することについて、どんな意味があるのかと考えてしまう。

ikimonogakari.com

この「活動休止」という言葉には、ファンの心を揺さぶるドラマがある。カリスマ的なロックバンドやアイドルグループにおいては、永遠の別れ、ぐらいの衝撃がある。

今回の西野カナの場合、そうではない。
走り続けてきたアーティストが一度、休み、クリエイティブなインプットを得る機会を得て、その後に続く、長期の活動計画を考える期間でもあると思う。


大きな意味は、毎年行ってきたリリースやライブがない時期にファンを不安にさせないよう、安心してもらおうという心遣いもあるに違いない。

さらに、ビジネス的な理由もある。

 

「活動休止」にはビジネス的な観点からも理由がある。

レコード会社や事務所には、社員が沢山いて、「音源制作」「ライブ演奏」「宣伝・販売」大きく3つの現場で働いてる。そして、ヒット曲等の作品、人気のあるアーティストを生み出し、「音源」、「ライブ」、「グッズ」「ファンクラブ」(音楽ビジネス4つの商材)で売上、利益を上げなければいけない。
こちらは、拙著『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』で詳しく書いたので、興味ある方はぜひ。

 

ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!

ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務 答えはマネジメント現場にある!

 

 

大きなアーティストとなると、プロジェクトの規模が大きくなり、長期の計画が必要になる。音源を売っていくにも1年単位の準備をかけるし、大きなライブを行うには会場を押さえ、半年前からチケットを販売する。

アーティストも、関わるスタッフも感情を持った生身の人間であり、いろんなコンデイションの中で、全人格をかけて、心を揺さぶる音楽を生み出していく。

当然、行き当たりばったりで、活動しているわけではない。

1年単位でプランを立て、ファンに向けて何を届けていくか計画し、そして、給料や制作費計上しなければいけない。売り上げについては、もっとシビアだ。エンタメ・コンテンツの売り上げは、上下のブレが激しい。大ヒットする事もあれば、伸びない事もある。大コケすることだってある。

言うまでもない事だが、アーティストも、ヒットや人気に影響を受けながら、収入を得る仕事としている。そんな浮き沈みの激しい音楽ビジネスいおいて、西野カナや、いきものがかりは、人前に晒されるプレッシャーを受け続け、常にヒットを出し続け、タイアップの要求に答え続け、お客さんを楽しませることで、ソニーグループを支え続けたアーティストと言える。

 

沢山の人が支えるエンタメ業界

当然、CDショップや配信サイト、グッズやコンサート業者など、アーティストに関わる仕事で収益を上げている事業者も沢山いる。

つまり活動休止とは、この計画、事業プランの中で、そのアーテイストの事業をストップするという意味がある。1年ないし、2年の間、このアーティストからの収益は無い。

その間、中心スタッフは、次の活動に向けての準備を行い、それ以外のスタッフは他のアーティストの仕事を行う。または、旧譜の販売促進やベストアルバムなどの企画を進めて売り上げを立てる。

活動休止宣言は、この業界の人々へのアナウンスであり、礼儀でもあるのかもしれない。


サザンオールスターズの活動休止

2008年にサザンオールスターズが活動休止を発表し、解散ではないかと話題になったことがある。

所属事務所のアミューズの株価は下がり、多くの人が働き、給料を得ている大所帯の会社に少なからず影響を与えただろう。桑田さんの病気療養も大きな理由だったのだろうと思う。

2013年にサザンは活動を再開するが、その後、サザンオールスターズのリリースと桑田さんはソロリリースは毎年行われ、確実なヒットとセールスを達成している。このリリースがあるかないかによって、年度の収支に多大な影響がある。

サザンや桑田さんが働かされている、こき使われている等というレベルの低い話ではない。ビッグアーティストは、彼らの作る音楽を心の支えにしているファンの気持ちに答え続けると同時に、音楽を届けていくために必要な大規模なスタッフの生活を支えるためには毎年リリースし続けていく事を受け入れている。

その責任を知っているのだ。

 

 

余談

桑田さんで思い出すことがもう一つ。
桑田佳祐の音楽寅さん」という番組があった。
桑田さんが番組内でゲストと一緒に企画、歌唱をする番組だったが、そのタイトルに「寅さん」とあることについて考えさせられた。

「寅さん」とは、故渥美清さん演じる、映画『男はつらいよ』の主人公、フーテンの寅さん、テキ屋・の寅さんのこと。

 渥美清さんは、この「寅さん」という役に後年全てを捧げ、イメージを崩さないためにそれ以外の露出を行わなかったらしい。 そして、映画会社松竹の売り上げのかなりの部分を占め、日本国中に愛された役を48作演じ続けた。亡くなられた時に、「死ぬときぐらいは寅さんをやめさせてほしい」と言い、葬儀は近い家族のみで行われたそうだ。

おかしな男 渥美清 (ちくま文庫)

おかしな男 渥美清 (ちくま文庫)

 

渥美清さん自身は、テキ屋というよりスマートなモダンコメディアンとしての役者・芸人を目指していたそうだ。「寅さん」が、渥美さんの素であると思っている人が多いが、それは、彼の徹底した役作り、イメージ作りの結果のようだ。

楽家である桑田さんは、役者である渥美さんとはジャンルが違う(音楽は演じきれない)ので、一緒には出来ないが、何か重なるところがあるのだろう。

 

ぼくのりりっくのぼうよみの引退

bokuriri.com

こちらも話題になりましたが、音楽をやめるとは一言も言ってないので、メジャーなシステムから離れて、コンスタントなリリーススケジュールから自由になるという意味なのかなと感じました。スケジュールや大きな組織の動きに縛られず、クリエイティブ重視で、ネットの自由さの中でに活動したいという意志を彼なりのユニークな発信と、メジャーシステムを否定するような言動せず(誰も傷つけず)、発信したいという彼なりのやり方なのかなと思いました。

 

一昔前なら、メジャーシステムから離れる=音楽生命の終了、すなわち「引退」でしたが、今の時代、充分活動を続けていく事は出来ます。

ただ、メジャーヒット、お茶の間スターを目指すという点では「引退」なのかもしれません。

 

メジャーとは何か?

よく「メジャーとインディの違いは?」と聞かれることがある。
海外においては、3大メジャー(ユニバーサル、ソニー、ワーナーのこと)、日本ではレコード協会に加盟している会社のこと、と定型で答えるが、もっと掘り下げると、コンテンツを世の中に安定供給できるシステムに沿って活動するための所属というようにも答えている。

日本で言えば、毎年、年度ごとに採算や収益を計算し、アルバムリリースやツアーを行う事だろう。

ワールドクラスになれば、アルバムリリースと全世界ツアーが時間がかかるので3年周期ぐらいか。

 

ネットの進化によって、アーティストがユーザーに直接、作品や情報を届けられるようになったが、規模が大きくなる中でコンスタントな発信を続けビジネスを成立するとなると、やはり、多くの人の力が必要になる。

毎年コンスタントにリリースとなると、当然クリエイティブに影響を与える事になる。いつもいつも斬新な発想や、特別な作品を作り続けるのにも限界がある。

しかし、メジャーとは、それをやり遂げなければいけない。
でないと事業として成立しない。

この仕組みが、時によって「クリエイティヴィティ」を抑圧する。
そのアンチテーゼとしてインディだったり、作品主義的なスタンスの活動がある。
メジャーの中にも、この「システム」と「クリエイティヴィティ」を両立する会社やプロジェクト、アーティストがいる。

そんな離れ業を行うアーティストは当然尊敬される。
そんな時代のシンボルが、渥美清さんであり、桑田佳祐さんなのかもしれない。

 

 

この不可解な文化、「活動休止」、さらに言えば、「解散」「引退」「卒業」、、に何か理解の糸口になるヒントを得てもらえましたか?

毎年コンスタントにリリースし、しっかりヒットさせ、ツアーを行って、ファンの人生に寄り添うアーティスト、クリエイティブを優先し別の形の挑戦をするアーティスト、どちらも大変な事だと思います。

『クリード 炎の宿敵』とルドウィグ・ゴランソン(映画×音楽レビュー)

音楽ビジネスBlogも殆ど、映画趣味Blogと化してきましたが。。。

今回は1月11日公開のこの映画と、音楽を手掛ける注目の音楽家ルドウィグ・ゴランソンについて。

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wwws.warnerbros.co.jp


ボクシング映画の金字塔、ロッキー・シリーズ最新作でありながら、黒人映画の名作『クリード チャンプを継ぐ男』の続編でもあります。



まずは、その前作がこちら↓

クリード チャンプを継ぐ男

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映画『クリード チャンプを継ぐ男』特別映像(Generations)【HD】2015年12月23日公開



あの有名なロッキーのライバルであり親友の黒人チャンピオン、アポロ・クリードに隠し子がいて、ロッキーに弟子入りするという映画。名作です。絶対見てほしい!

監督はライアン・クーグラー、この『クリード チャンプを継ぐ男』をヒットさせ、次の作品でマーベルの『ブラックパンサー』を超大ヒット、ブラックムービーとメガヒット・ブロックバスターを両立させ、興行成績歴代3位(これより上は『スターウォーズ フォースの覚醒』と『アバター』)と時代の寵児となった。

↑の動画に当時27才のクーグラーが、スタローンに、黒人を主役にしたロッキー続編の提案をしたエピソードあります。主役にクーグラーの分身であるマイケル・B・ジョーダン、そしてロッキー自らがコーチ役に。ファンタジーとリアルを絶妙にかぶせ、エモーショナルな作品になっています。

この映画、いくつか名場面があります。親父のYoutube動画をプロジェクターで映し出してシャドーボクシングするシーン。癌になったロッキーを介護しながら病院でトレーニング。ストリートバイカーのような集団と一緒に街を走るロードワーク~バイクがぐるぐる走り回る中シャドーボクシングをしてロッキーを励ますシーン。などなど。。



 

 

ブラックパンサー

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主要キャスト全て黒人、監督も黒人という画期的なヒーローSF映画ブラックパンサー』。この映画の監督であるライアン・クーグラー、そして、強敵キルモンガー役として存在感を発揮したマイケル・B・ジョーダンが、今回紹介する『クリード』の主役アドニスクリードを演じている。

 
ブラックパンサー』は、ケンドリック・ラマーのプロデュースにより、現在のヒップホップやR&B中心のメインストリームアーティストが集結したソングアルバムも発表され、大ヒットを記録している。

 この『ブラックパンサー』、テクノロジー描写による近未来とアフリカの民族的な伝統をミックスさせ、アフリカ系美男美女俳優がズラリ登場して、見た事のない世界観を生み出しています。オスカーにもノミネートされるのではという噂で、時代を象徴する作品であり、新しい映像体験を生んだ作品としてチェックしておきたいところです。そして、音楽がその世界観に大きく貢献したとして、高い評価を得るでしょう。


つまり『クリード』とは、名高いロッキーシリーズの進化形であり、現代アメリカカルチャーの潮流の中心にある映画やヒップホップなどブラック・カルチャーでもあるという、2大潮流が合流するという状況から生まれたエンタメ作品が『クリード 炎の宿敵』なのだ。



さて、ここからは音楽の話。。これらの作品を音楽面で支えているのが、この人

クーグラー、チャイルディッシュ・ガンビーノの音楽を手掛けるスウェーデン作曲家ルドウィグ・ゴランソン

www.soundtoys.com


前作『クリード チャンプを継ぐ男』と『ブラックパンサー』を紹介したのは、理由がある。このブログ記事において、中心となる音楽家、ルドヴィグ・ゴランソンは、クーグラーやジョーダンとチームを組んで、この『クリード 炎の宿敵』でも音楽で作品を盛り上げている。
彼は、南カリフォルニア大学でクーグラーと出会い、『フルートベール駅にて』『クリード チャンプを継ぐ男』『ブラックパンサー』というクーグラー3作で音楽を手掛けた。
特に、『ブラックパンサー』での、アフリカ音楽を取り入れたスコアは、アフリカの架空の国、実は世界最先端のテクノロジーを持つという、ワガンダの世界観を音楽で実現した。クーグラー、ジョーダンと共に成功の階段を登った音楽家だ。

theriver.jp


そして、ゴランソンを語るのに欠かせないのが、チャイルディッシュ・ガンビーノ(ドナルド・グローヴァー)だ。
2018年、アメリカの人種問題や貧困、暴力など社会問題を描き「This is America」(これがアメリカ)ろ歌い、衝撃を与えた曲とビデオ。


Childish Gambino - This Is America (Official Music Video)


俳優、脚本家、コメディアンであるドナルド・グローヴァーの音楽活動の際のプロジェクト名が「チャイルディッシュ・ガンビーノ」だ。
2016年に発表された『Awaken, My Love!』が大ヒットを記録。最優秀トラディショナルR&B賞を受賞した「Redbone」はじめ、5部門にノミネートされ、トップアーティストの地位を確立した。日本でもCMに使われたりと耳にした人は多いだろう。
ルドヴィグ・ゴランソンは、このガンビーノの最初のミックス・テープ2010年発表の『Culdsec』から、プロデューサー、共作者として、音楽的な中心を担っている。

 


open.spotify.com

ファンカデリックなど70年代のブラックパワー音楽の影響を受けたトラックを基調としたチャイルディッシュ・ガンビーノの音楽的パートナーと言える。

 

「This is America」で、アメリカで最も注目されるアーティストの一人となったチャイディッシュ・ガンビーノ、そしてアメリカで最も注目された映画『ブラックパンサー』、この2つの分野のブラック・カルチャーにおいて音楽を担ったのが、ルドヴィグ・ゴランソンなのだ。


 

クリード 炎の宿敵』


映画『クリード 炎の宿敵』本予告【HD】2019年1月11日(金)公開

 


映画『クリード 炎の宿敵』特別映像【誰が為に戦う編】2019年1月11日(金)公開


前作『クリード チャンプを継ぐ男』で、一度終わったロッキーシリーズの代替わりを果し、さらに『ブラックパンサー』の空前のヒットで、アメリカでは大ヒット間違いなしの上でのスタート。シリーズ最高のスタートを記録しているそうだ。
ちなみに、監督はクーグラーではなく、スティーブン・ケイプル・Jrという新鋭。今回製作に名を連ねるクーグラーの推薦。プロフェッショナルなスタッフ陣のもと、クオリティには全く問題ない。ブラックシネマ色は少し薄れたかもしれないので、クーグラー作品から期待する人はご注意。ライアン・クーグラーが前作でロッキーの魂を現代にリニューアルした型をしっかりエンタメに昇華した娯楽作として、確実に興奮させられ、泣かされる映画になっている。
過去のロッキーシリーズとの違いとして大きいのはヒップホップの要素。音楽的にもカルチャー的にも。前作より薄れたとはいえ、このシリーズとラップやR&Bとの相性はとてもよい。

あと、個人的には『男はつらいよ』の寅さんと甥の満男を思い出しました。
帽子とジャケットがトレードマークのロッキー。グズグズしたアドニスの成長物語。先の読める定番の展開、ここぞという場面で登場するテーマ曲。ちょっぴり意外な展開をスパイスに、なぜか感動してしまう安心の定番作品。。

1月11日から公開なので、是非、劇場で観てください。
 

 Spotifyプレイリスト

今回も記事にちなんだプレイリストを作成しました。
クリード 炎の宿敵』と『ルドウィグ・ゴランソン』の2つです。
この記事で紹介した曲がまとまっておりますので、楽しく聴いて頂けたら嬉しく思います。
70年代ファンクベースのヒップホップ、映画のサントラ・スコア(劇伴)、EDMから、ポップロック、アフリカン・ルーツ音楽と何でも探求するゴランソン。
世界の音楽シーンでヒットを次々に生み出すスウェーデン人音楽家の最先端ですね。
この2つのプレイリストで現状の彼の仕事がある程度まとまってると思います♪

クリード 炎の宿敵』

 
『ルドウィグ・ゴランソン』