新海誠監督最新作『すずめの戸締り』観ました。
最高傑作とか集大成という話もありますが、完成してしまったものという印象は無かったです。新しい挑戦の面も多く、より広い層にアプローチした意欲作と思いました。
さて、新海誠監督は音楽の使い方が独特。前2作でもRADWIMPSとがっちり組んでいて、サントラとか劇伴、それから主題歌というレベルを超えたコラボレーションと呼んでいいぐらい、作品の中心に楽曲が入ってます。
特に『君の名は』の「スパークル」や、『天気の子』の「愛に出来ることはまだあるか」は、新海監督の息遣いまで聞こえてきそうな強さがありました。これが、新海監督作品のインパクトになってました。
『君の名は』の、クライマックスで「スパークル」がかかる場面で、
いろんなドラマが進行して重なり、時間とか、恋愛とか救出彗星とか家族関係とか
一緒くたにして、感覚的な編集を曲とのタイミングでまとめている。あれを論理だてて説明するのは不可能で。音楽で言うところの、セッションしてるうちに名曲生まれたみたいな。偶然という事ではないのですが、そういう、感覚的な表現が生んだ奇跡みたいな名シーンだったと思うんです。新海監督と野田洋次郎がハモって、何か伝えてるみたいな感じですね。
今回の、『すずめの戸締り』は、そのMV的な手法は薄く、その点では、今回は音楽の役割は、一般的なサントラ、劇伴だったと思います。
今回は、新海監督の個人的なメッセージは、一旦置いておいて、新海監督は男性ですが、女性であるすずめのストーリーをしっかり描きましょう、ということかなと。
男性目線の恋愛が個性の新海監督が女性が主役の映画に挑戦するという点が、今回のチャレンジだったんじゃないでしょうか。
男性共感強い監督なので、ちょっと戸惑うというか評価が分かれる点でしょうか。
そこが、音楽の使い方にも現れていたと思います。
ゆえに、音楽(ヴォーカル曲)で監督のメッセージを強く伝えるスタイルを一旦封印したのかなと思いました。
RAD WIMPSといえば、法律とか社会システムとか歴史とか科学とか世の中の色んなこと仕組みやシステムを分かったり、感じた上で、それを超えて貴方が好きみたいな世界ですが、前二作って、割とアナーキーというかパンクというか。親に反抗したり、法律とか破ったり観たいなことするんですけど。今回、そういうパンクなエッジはあんまりなくて。
あと、エッチもないですね(笑)
新海監督は、ロック的な若者マインドを持った人で、そこが音楽の使い方に現れていたんですが、それだけの人じゃないので、今回は表現の幅を広げて、自分の十八番に頼らないアプローチをして、見事に成し遂げたんじゃないかなと思いました。
この音楽もそうですし、青春恋愛ストーリー的要素が押さえ気味だったり、
音楽的な手法だったりいつもと違ったり。
ただ、それで、つまらなくなったのかというと、そうではなく。
演技とか絵とかドラマ的に感情を強く伝えてました。逆にわかりやすくなったと思います。
ジブリのような全世代が共感できる国民的映画、世界中の人が注目する新海監督作として、日本的な心情や宗教観が伝わって興味持って楽しんでもらえる内容になっていて
さすがと思いました。国内国外隔てなく楽しめる作品であり、国外のマーケットも観ているからこそ、日本的なルーツとかアイデンティティが大事なんですね。
『君の名は』『天気の子』『すずめの戸締り』は、
新海監督と川村元気プロデューサーのタッグ三作目となりますが、
三作観て、この協力タッグのバランスが三作とも違うというか、一作ごとにさじ加減を調整しているというか、バランスが変わっている気がします。
川村さんは、ジブリの鈴木敏夫さんのような存在、つまりプロデューサーですが、
宮崎駿さんや高畑勲さんは、そもそもアニメ会社のクリエイターとして育った人たちで、ジブリで作家として、大衆性と作家性のバランスをとったと思うのですが、新海監督は、スタートが作家であり、パーソナルな私小説的な表現が彼の個性だったと思います。
なので、今後の新海監督作品で、また、斬新な音楽使いが見れると期待して、今回は、新たな新海作品を楽しむ事にしました。
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☆脇田敬☆
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著書『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』,
経産省監修『デジタルコンテンツ白書』編集委員
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