音楽ビジネスの10年代を振り返る「スマホ、SNS、サブスク」の時代

あと数日で2019年が終わる。
と同時に2010年代が終わる。
ITやインターネットで激変した20年の表と共に、

この10年について振り返りたいと思う。f:id:wakitatakashi:20191230125557j:plain

 

★2010年代は「スマホSNS、サブスク」の時代。

iPhone4の発売は2010年6月。それまでのiPhoneや他のスマホに比べ、格段と使いやすくなり本格的なスマホ時代の到来となる。
YouTubeでは、2010年前後に記録的な再生回数を記録した曲たちは、2009年LADY GAGA「Bad Romance」、2010年Justin Bieber「Baby」、2011年LMFAOParty Rock Anthem」、2012年PSY「江南スタイル」。YouTubeが音楽を楽しむツールとして、不動の地位を築いた象徴的な曲たちだ。
サブスク時代を切り開いたSpotifyは2008年違法サイトへの対抗策としてスウェーデンで設立、ヨーロッパで普及した後、アメリカでのサービス開始は2011年。

また、Taylor SwiftやEd Sheeranなど2010年代前後にデビューし、YouTubeだけでなく、SNSのトレンドやSpotifyApple Musicといったサブスクの流れに上手く乗り、人気を拡大。現在の音楽シーンのトップに立っている。

Taylor Swiftは、デビュー時、Myspaceを初めて行ったカントリー歌手として話題を呼び、その後、リリースの度にYouTubeTwitterInstagram、そしてApple Musicなど、新しいツールでの話題を作り、時代を象徴するアーティストとしてトップに居続けた。2015年の『1989』ではApple Music独占先行配信、2017年『Reputation』では、発売前に全SNSの投稿を削除するなど、まさにSNSの申し子のようなアーティストだ。

Ed Sheeranは、UKで、グライムと呼ばれるUKのHIP HOPアーティストとのコラボで注目を浴び、国内で新人記録を打ち立てた2011年デビュー後、アメリカや世界では、TaylorやONE DIRECTIONなどとの共演で話題を作りながらSpotifyで曲を広めた。

男性ソロアーティストでアメリカでのセールスが歴代1位であるDrakeは無料ミックステープで人気を呼び、2010年にデビューし5作のアルバム、3作のミックステープをこの10年の間にリリースした。HIP HOPの新しいアーティストがメインストリームのトップに次々と現れる理由として、このミックステープという文化が大きな役割を果たしている。CDを販売することなく、グラミー賞を獲得したChance The Rapperの登場は、このミックステープの存在とサブスク時代の到来を大きく印象付けた。

※ミックステープについて書いた以下の記事も参考にしてほしい。

wakita.hateblo.jp
こうして、2010年頃に躍進したTwitterFacebookInstagramYouTubeは、「電気、ガス、水道」のようなオンラインに不可欠なインフラとなった。SpotifyはそれらのSNSと連携がスムーズであり、またSpotifyそのものがSNS的な拡散性を持つことで、違法音源サイトに対して有効な選択肢とならなかったiTunesに変わり、音楽リスニングの中心となった。
そして、Appleが重い腰を上げ、2015年にApple Musicをスタートさせ、音楽ビジネスにおいてサブスク時代が一気に加速。
この頃より下降していた音楽ビジネスがサブスクを原動力に回復していくことになり、サブスク時代が決定的になった。1999年Napstar設立などからはじまる2000年代が「インターネット」の時代だとしたら、2010年代は「スマホSNS、サブスク」の時代だった。
そして、時代は次に向かっている。2018年ごろから人気となったショート動画投稿アプリTikTokは中国のIT企業バイトダンスのサービスだ。Spotifyスウェーデンの企業であることを上回るインパクトだ。2019年はTikTokから大ヒット曲が生れた。
TwitterFacebookInstagramにはない音楽と結び付いた機能、業界との連携も強い。音楽シーンを活性化するパートナーとなっていくことを期待したい。

 

★日本の2010年代
日本についても触れておきたい。2010年、デビューから4年目のAKB48が「River」で大ブレイクを果し、第一回選抜総選挙を実施、2010年に国民的アイドルの地位についた。2007年にサービス開始したニコニコ動画は全盛を極めた。2009年-2010年に米津玄師は「ハチ」名義で楽曲を投稿していた。ニコニコ動画がプラットフォームとして動画配信市場を牛耳るような展開は無かったが、ネット音楽における未来を先取りした文化を作り上げた。2001年にデビューしたEXILEは、2000年代後半”オカザイル”で、国民的アーティストの地位につき、2010年には弟分の三代目J-SOUL BROTHERSをデビューさせ、自らは「RISING SUN」(2011)を歌い、多数のグループを抱えるLDH帝国を築き上げていく。少女時代の日本デビューは2010年の「GENIE」、それ以前の人気K-POPアーティストの東方神起BOAは、日本で制作された曲を歌っていたが、少女時代は日本デビュー前から、韓国でのヒット曲がYouTubeで日本に伝わり、デビュー曲も訳詞でのデビューとなった。その後の日本でのK-POP人気の型が出来たと言える。

上記のようにAKB、LDH、韓国という3勢力は、この時期に急上昇している。
AKBグループを筆頭に、特典券商法でCDを延命させ、日本でのサブスク時代を遅らせてしまった戦犯のように言われることがあるが、これらの3勢力は、YouTubeもサブスクも早い段階で解禁している。
特典商法だけではない。日本の2010年代においても「スマホSNS、サブスク」は不可欠であったのである。

 

2020年代は?5Gによって激変する社会全体、音楽やエンタメ。
ブロックチェーンやAIは?

スマホSNS、からのサブスクの時代だった2010年代が終わり、また新しい10年が始まる。次の時代はどんな時代だろうか。
一番の注目は、5G通信(第5世代移動式通信)だ。
「高速」「大容量、低遅延」「多接続」の技術革新により、4Gの20倍~100倍のスピード、遅延がなくなることでリアルタイムの同期が可能に、さらに、多数の接続が同時に行える。これらの実現は、またダイナミックの社会の変化をもたらし、エンタメの分野の影響も大きいだろう。

また、ブロックチェーンにも注目したい。
ネット上での双方向なコラボレーションや収益分配がスムーズに実現すると言われている。

AI(人工知能)は、どのような影響を及ぼすだろうか。すでに様々な分野で活用され、スピーディーに多様な趣向に応えるサービスを支えていると聞く。

これらの新しい技術によって便利さや楽しさはどんどん増えるだろう。しかし同時に様々な問題ももたらすに違いない。

2000年代のネット、2010年代のスマホと音楽ビジネスは大きな影響を受けた。ネットへの取り組みが後手になり、違法ダウンロード、違法アプリ、チケット高額転売など、問題も多く発生し音楽業界の根幹を揺るがした。

違法でなければやってもいい。自分たちの地位や立場、利益を追求する事は問題ないという風潮。やったもの勝ちというIT業者の考え方。新しい時代の波に積極的に飛び込めなかった既存業界やミュージシャン、そしてファン。

約20年かけて、IT技術の急速な進化に社会は対応できる柔軟性やスピードを身に着けただろうか?

2020年代変化はさらに加速する。”音楽ファースト”の思想でテクノロジーを使いこなし更なる感動が生れる時代を創るために、全力で役立ちたいと思う。


次回の更新は「2019年を振り返る」です。
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脇田敬

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著書『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』

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