1月6日にアメリカ、ワシントンで起こった議会襲撃事件から1か月。
「フェイク」や「ヘイト」を放置したTwitterやFacebookへの不満をありますし、ビッグテックを優遇した政治の責任も問われるべきだと思います。が、そもそもの話、どのように「フェイク」「ヘイト」はウィルスのように広まってきたのでしょうか?
2月12日に私が運営に携わっているニューミドルマンコミュニティのイベントに行います。
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そちらに先立ち、オルタナ右翼~襲撃事件へと連なる、文化を「武器」として政治に利用した問題について考えてみました。
私が身を置く音楽ビジネスにおいて、今やSNSは不可欠。
特にTwitter、Facebook、Instagram、YouTubeら主要ツールについては、プロモーション活用といったレベルではない、「それがないと生きていけない」 ”インフラ”、水道ガス電気、家や道路ぐらいの存在です。
これら主要SNSや匿名掲示板サイト、動画サイトなどで、カバーやパロディ、尖った表現など、著作者、権利者の許容範囲の中で最大限、言論や表現の自由の下、発信が行われています。模倣や改変、批判や極端な言論や創作もエンタメやアートの世界では許されています。極端に言えば「パクリ」も愛があればOKだったり。。
しかし、今回起こったことは、こういったエンタメ、アートの自由さ、ゆるさを現実社会の政治に持ち込んだ動きです。誰もが発信できるSNSでの自由がハッキングされ、政治利用されたと考えます。
スティーブン・バノン「文化から政治を変える」
以前『マインドハッキング』についての記事を書きました。軍事コンサルタント会社ケンブリッジ・アナリティカ事件の開発者による告発本です。
SNSの規制をかいくぐり大量の個人データを取得、AIを駆使して、心理学者とエンジニアが共同でビッグデータ解析とナラティブ(物語)制作を行い、マイクロターゲティングで発信、投票行動に影響を与える操作を行ったケンブリッジ・アナリティカ(CA)についての告発本です。
この本に登場するキーパーソンである、スティーブン・バノンは、トランプ大統領を生んだ男として知られ、ホワイトハウスで首席補佐官まで登りつめました。ステーブン・バノンの考えは、政治を変える為に、文化を使い戦う「文化戦争」という考えです。
ハックされた「カルチャー」
日本でもTwitterで多く見られる「陰謀論」について、「?」な方が多いと思いますが、このスティーブン・バノンはそのカギを解く存在だと言えます。
バノンの経歴は、
・アメリカ海軍「戦争」
・ゴールドマンサックス「金融」
・香港でゲームアイテム販売会社IGE経営「ヲタク」
・ハリウッドで右派映画プロデューサー「エンタメ」
・ブライトバート・ニュース「フェイク」
頭がよく、体力があり、金に強いマッチョが、ネットの力で革命を起こそうとしたと言えます。
詳しくは、『マインドハッキング』と合わせて、以下の書籍に詳しく書かれています。
匿名掲示板と反ポリコレ
バノンは、匿名SNSにも注目し、これを政治利用することを目指しました。
4chan、8kunといった、日本の2チャンネルに影響を受けて生まれています。その中にはヲタク(ナード、ギーク、インセル、ベータ、、)、プアホワイト、小児性愛者、犯罪者といった集団が、社会モラルや法の外で、誹謗中傷、フェイクや人を馬鹿にした笑いなどを書きこみ合っています。バノンは、匿名の”怒り”や、何でもありな場のエネルギーを利用できると考え、ターゲットとします。
2014年に起こった「ゲーマ―ゲート事件」はヲタクとポリコレの対立のルーツともいえる出来事です。ゲームの中での女性(性的、ロリコン的な表現)へのフェミニズム的な意見に対してゲーマーやゲーム関係者から生まれた匿名掲示板を中心に広がった大きな反発です。
バノンは、フェミニズム、人種差別撤廃、環境問題、グローバリゼーションなどに対抗するために、この勢力を海軍時代に見たイスラムゲリラのような革命軍に出来るという着想を得たそうです。
私たち日本人にとっても、ジャパンカルチャーが世界に与えた影響の影の面としても認識しておくべきべきトピックだと思います。
トランプとの合流
「革命家は常に芸術家」と考え、文化を武器にしたバノンと、権力、権威をエンタテイメント化する天才パフォーマーであるトランプが組んだチームが、掲示板などの地下メディアとSNS、ケーブルTVやFOXのような大手メディアを繋げることで、社会に眠る怒りを呼び起こし、攻撃へと仕向けたのだと思います。
『マインドハッキング』や『AI vs 民主守護』の中には、実際に開発を行ったクリストファー・ライリーによる「情報兵器」と呼ばれる、以下の3つの要素を組み合わせたオンラインのマインドコントロールの仕組みについて書かれています。詳しく知りたい方は是非、読んでみてください。
具体体な手法
・Facebookから得た8000万人分の個人情報を収集
・パーソナリティ5因子モデル(ビッグ5、OCEANなどと呼ばれる)、ダークトライアド(暗黒の3大特性)を用い、衝動的怒りや陰謀論に傾きやすい集団を抽出
・怒りに火をつける、不快なコンテンツ、腹正しいコンテンツを作成(最もバズるのは不快な内容)※フェイクあり
・SNSのアルゴリズムとターゲット広告を活用
・オルタナ右翼サイト、ブライトバートニュースや大手のFOXといったメディアを複合させる
・トランプが、「メキシコに壁を作る」「アメリカ・ファースト」また、対抗候補への攻撃など。
これらが、すべて合わさり、大きなうねりを起こしています。
文化をめぐる戦い
『マインドハッキング』の著者クリストファー・ワイリーは、バノンに魅了され、CAにて情報兵器を発明しイギリスのEU離脱選挙や2016年大統領選で成果を挙げますが、不正の数々に良心を痛め、CAから離脱し告発します。
このクリストファー・ワイリーがなぜ、バノンに魅了されながらも、告発へと向かったの心境の変化の中に「カルチャー」観、つまりファッションや音楽への愛で育てられた良心があります。
トランプ政権、ナショナリスト、ポピュリストが、富裕層やビッグテックを優遇し、格差を生んでいることへの不満を代表している面があり、何が正義なのかわからなくなることがあります。1社会の分断、対立について目をそらさず向き合うには、自分を支えてくれている何かが必要です。私にとってそれは「音楽」です。「嘘」「憎しみ」ではなく「心」と「愛」で考える。「真実」「愛」を信じる音楽教信者(まじめ笑)として戦っていきたいと思っています。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
イベントやオンラインで、この話題について意見を交わすことを楽しみにしております。
イベントでは、プラットフォーム規制などについての話も重要かと思いますが、その背景になるこれらの情報もまとめる準備をして臨みたいと思います。
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脇田敬
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著書『ミュージシャンが知っておくべきマネジメントの実務』,